第28話 いざ

「どう?さっきよりはマシ?」


「うーん…さっきよりかは断然マシなんだけど、まだちょっと体がダルいかな。」


「そんなことを言っても決めたものは決めたのよ。シャキっとしなさい!!」


「はいはい…」

ミディは気だるげそうに返事をして地図と本を開く。


「ん″ん…いい?今から行くのは探検とかそういう、生半端はものじゃない。1つ間違えれば【死】に関わるものだ。」


みんな真剣な表情をしている。

「最悪の場合、ひび割れに入る前に辿った道を戻るか、ネグの能力のテレポートで脱出を断念して、ここでひっそり暮らす。という選択肢もある。」


「まあその選択肢もはミロワだけかもな。」


「ヴッ…」


「そして今から行く道は″予想″であって、確実な道を辿るわけではない。なにか危険があったら、本が教えてくれる。もしくは探知機から音が鳴る。」


「なに、その本。」


「なんか自我があるのか知らねーけど、こっちの声が聞こえてるらしいぜ」


「そして万が一、仲間に何かしらの問題があって、生存してるかを確認するための心拍測定器を、僕とガンダだったら腕時計、ミロワだったら手鏡に、それを搭載した。」


「もし、心拍数がとまってたりしたら、すぐに助けにいけるようにってことだね。」


「すぐに助けにいけるかはわからないが、それもそうだな。とりあえず、忘れ物はないか?」


「勿論!!」

「おう」


「それじゃあ今からこの地図の星のマークがあるところに向かう。そして、ここについたら一休みするって感じだ。わかったか?」


「わかったわ!!みんな、気を引き締めて行きましょう!!!」




~そうして、私たちの脱出劇が始まった~




現在夜中の12時。ミディの家があるこの町から抜け出すことが今の目的だ。


「町を抜けだすだけでも、結構キツいわね…」


「時間的に警備もまあまあゆるい筈だが、ミロワの顔がバレたらアウトだもんな。」


「とりあえず怪しまれないように裏道を通って進もう。」


「うん。」

そうして私たちは人通りの少ない裏道を歩く。


「ここには、人は住んでないの?」


「うーん…あんまり住んでないのかな。

どちらかと言うと、ここら辺は奴隷商売とかが盛んな町だから。」


「どっ!?」


「あ、いいや、僕のいたところは違うからね?ここら辺の話だからね?」


「う、うん。」


道をどんどんと進んでいく。迷路みたいではぐれちゃいそう。そう思っていると、


キィ!!バサバサ!!


「キャッ!!」

飛び出してきたコウモリに驚いてしまった。

「何やってんだよお前!!」

ガンダが怒鳴ると、近くのドアがギイィィ…と開く音がした。


「ああ…?今誰かの声がした気がしたんだけどなあ…」

ドアから出てきたのは強面のおじさん!!!

私は怖くて息が詰まりそうになった。


「こっちか?」

(ヒィイイィィ!!近づいてきたよおおお!!!)

どんどん私たちのいるところに近づいてくる。いきなりピンチだ。 


「ヤバイ、あの角曲がったらバレちゃ、」

「シッ!!」


ミディは私に黙るように合図する。

「あー、ここだな?」

(嘘!!バレてる!!)

おじさんが角を曲がろうとしたその時!!


キィ!!バサバサ!!バサバサ!!バサバサバサバサ!!

コウモリが勢いよくおじさんの顔面めがけて飛び立っていった。


「テレポート」

ネグがボソッと呟くように言うと

私たちは1個奥の角に移動していた。


「兄貴、多分そこにいたのコウモリだったんじゃないっすかね?それが人の声に聞こえたとか?」


「チッ…んだよ。紛らわしいな。」

おじさんと、その子分?みたいなのは建物の中へ入っていった。

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