いけいけ勇者様72

最上司叉

第1話

魔物と勇者の戦いが始まった。


【キィン】


【ガキィン】


「オマエナカナカヤルナ」


「お褒めに預かりどうも!」


【キィン】


族長に借りた武具は軽くて扱いやすいが剣に威力がない。


この剣で魔物に勝てるだろうかと勇者は考え始めたその時どこかから女の声が聞こえてきた。


〚そのままではダメ〛


「?」


〚剣を解き放ちなさい〛


「?」


剣を解き放ちなさいと言われてもどうするのか勇者にはさっぱり分からない。


その間にも魔物の攻撃は勇者目掛けてとんでくる。


〚ダメね…〛


「?」


勇者は魔物の攻撃を避けながら声の主の女を探す。


〚どこ見てるのよ!〛


「?」


勇者は訳が分からない。


魔物の攻撃を勇者は躱しながら辺りを見渡す。


〚もうホントにどこ見てるのよ!〛


「?」


どうやら勇者は見当違いのところを探してるようだ。


〚ココよ!ココ!!〛


「?」


何処だ?と勇者は思った。


〚…ホントダメね…もういいわ…私がやる!!〛


「?」


勇者は訳が分からない状態だが勇者の剣が眩く光り始めた。


勇者の借りた剣はまるで意志を持つように勝手に動き始めた。


「!!」


勇者は剣の動きに必死についていく。


「ナンダ?!」


魔物も急に剣の動きが変わり戸惑っている。


〚これでトドメよ!〛


「?!」


勇者の借りた剣の先から光線が出た。


その光線は魔物の身体を貫く。


「ギャァアアア!」


「やったのか?!」


「…アレ?ナントモナイゾ」


「!!」


〚…嘘でしょ?効かないなんて…〛


「?」


何が起こってるのか誰も分からない。


魔物は勝利を確信したのか攻撃が勢いを増す。


勇者は魔物の攻撃を躱しながら魔物に勝つ方法を考えた。


そして勇者はひとつの考えに至る。


勇者1人でも声の主1人でも勝てない。


2人で力を合わせて勝機が出てくると。


勇者は声の主に話しかける。


「おい!」


〚おいとは何よ!〛


「この際どうでもいい!力を合わせて魔物に勝つぞ」


〚イヤよ!〛


「勝てなくていいのか!この街がめちゃくちゃになるんだぞ!」


〚ぐぬぬ…〛


「早くしろ!」


〚分かったわよ!〛


声の主がそう言った瞬間勇者は眩い光に纏われた。


「ナンダ?!」


『くらええええええ!』


勇者の声と声の主の声が重なり合う。


【ガキィィィン】


「…ナン…ダ…?」


「殺ったか?!」


勇者と声の主の渾身の一撃が魔物に入った。


「グァァァァアア!」


魔物の最後の絶叫が街にこだました。


「終わった…」


〚勝った…〛


『やったー!』


こうして勇者と声の主の魔物退治が終わった。


翌日


【チュンチュン】


勇者は族長の家に行き借りた伝説の武具を返し小人に勇者と仲間の家に送ってもらう。


「ありがとうございました、少ないですがお礼です」


「有難く使わせてもらう」


「早くしろ」


「まぁそう言わずに、この街を救って頂いたのですから」


「…族長がそう仰っるなら」


「是非またいらしてください」


「あぁありがとう」


「行くぞ」


そして勇者は気がついたら自分のベットに横になっていた。


あの街のことは夢だったのか?と勇者は一瞬考えたが勇者の右手にはお礼の袋が握られていた。


勇者は部屋の隅の穴を探したがそんなものは何処にも存在しなかった。


どうやら詮索しない方が良いみたいだ。


そして勇者はあの街の出来事を誰にも話すことは無かった。

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