Forward! 未来に飛ばされた泣き虫おっさんは星の願いを聞いて全てを救う旅に出た
@shouei-690808
第1章 動き出した運命
第1話 プロローグ
えーと、訳がわからない。
何で俺はこんな森林の、舗装もされていない道端に、たった一人で佇んでいるんだろう?
つい今の今まで、亡き妻の墓参りからの帰りの真っ最中、息子と娘と3人で駅前の交差点で信号待ちをしていたはずなんだけども。
そういや信号待ちの中、突然苦しくなって目の前が暗くなって体中に痛みが走って、それから気が付いたらここで蹲っていたんだっけ。
というか、だ。
ここ何処だよ?
人っ子一人通っていない未舗装の道……か?これ。
駅から周囲10キロの範囲に、こんな森だか林だか山なんかなかったはずなんだけどな。
うーん、とにかくよく思い出してみようか……
それは、少し前の事
―――――
11月末とは思えない小春日和、今は妻の墓参りを済ませて帰宅する最中だ。
娘のミトと息子のヤマト、そして俺の3人で駅前の横断歩道で信号待ちをしている。
休日ともあって駅前通りは車も多く、人も多くてわりと喧噪な感じだ。
ここ三重県の桑名という市は、微妙に大きな都市だ。
25年くらい前に仕事で越してきて以来、ずっと住んでいる今では馴染んだ街だ。
「うーん、いい天気だな。」
「晴れて良かったよね。パパとお兄ちゃんはこの後どうすんの?」
「お前たちはどうする?丁度昼時だし、何か食べていくか?」
「そうだな、父さんの奢りでウナギなんか良いかもな。」
「そうだね、久々にウナギなんて良いんじゃない?パパの奢りで!」
目を輝かせて“奢り”を強調するあたり、やっぱり期待してたのかな?
「マジかよ。ま、いいけどね。じゃウナギ喰って解散だな、何ならお前らウチ泊まっていけよ。久しぶりの実家だろ。」
ミトもヤマトももう大人だし、ヤマトは妻子持ちだからなかなかね、こういう時くらいしか実家に来ることもないしな。
「まー、俺は帰らないと。明日も仕事だし。」
「私も明日早いからね、泊まっていきたいけど我慢するよ。」
「そうか、なんか寂しいけどしゃーないか」
そんな話をしている時だったな。
《準備完了、じゃあ、ちょっくらごめんねー》
突然頭に声らしきものが響き、その瞬間、激痛が俺の体を襲った。
一瞬にして俺の体は白と黒の、なんだこれ?火か?そんな様なモノに包まれた。
「ぐわあぁぁぁぁー!」
熱く、はないけど痛い。とにかく痛い。体中痛い。
体を抱えて蹲ってしまったよ。
「パパ!」
「父さん!」
ミトとヤマトが叫ぶ声が頭に響く、と同時にさっきの変な声らしきものも聞こえた。
《ちょっとだけ痛いけど我慢してねー、すぐ済むからさ。》
なんとも緊張感のない声だが、今はそんなことはどうでもいい。
とにもかくにも苦しくて痛いんだが、なんぞ?これ?
「パパ!パパ!いやぁー!!」
「なんだこれ、火なのか、父さん大丈夫か!」
二人の叫び声を聞きながら、俺は意識を飛ばしてしまった。
――――
そして気が付いたらここで蹲っていた、と。
うーん、やっぱり訳が分からん、というかまだ体中痛いんだが、何だったんだ、アレ。
とりあえず現状把握だな。
スマホで位置確認してみようと、持っていたデイバッグからスマホを取り出そうとしたのだが……あれ?
なんか、バックの中は淡く光る感じの空間が広がって、る?
スマホが無い、というか、入れていた中身が全部……無い?
これは非常にマズイのではないかなぁ、財布もスマホもその他諸々、無いと困る。
とりあえず中がどうなってるのか、手を突っ込んでみた。
そのままスマホを頭に思い浮かべると、何かを掴んだ。スマホである。
おや?さっきは中に何も無かったはずなんだけど?
ま、そんなことは今は良い、いや、良くはないけど。
取り出せたスマホのメイン画面を出し、マップを開いてみると白っぽい画面の中央に
「表示?できませんよ。」
の文字が。
よく見ると、電波も届いていないようで、圏外っぽい。
いやいや、俺は都市部の駅前にいたんだぞ?
いくら何でも圏外はないだろ。
そうは思いつつも、周囲を見てみれば確かに駅前ではない、というか木しかない。
よくよく観察してみれば、電柱なんかもない。
人の話し声も、車が走行する音も、ひっきりなしに上空を飛ぶ飛行機の音もない。
至って静かな森の、というか山の中みたいな感じだ。
とりあえずもう一度スマホを起動し、方位だけでも確認しようとコンパスを使ってみるが、コンパスは面白いようにぐるぐると回っている。
なるほど!面白れー!
って、笑っている場合じゃないな。
他の荷物もあるのだろうかと、手を突っ込んで探ってみると、頭の中にバック内に何があるかがリストアップされた。
一応、元の持ち物は全て残っているようで安心したが、何と言うか、このバック、外見以上の容量になっているようだ。
あれだ、青いネコ型ロボットのポケットみたいになっているみたいだな。
こんな不思議な事もあるんだな、なんて関心している場合でもないな、うん。
ひとまずここにいてもしょうがないか。
見れば未舗装の道には轍らしき痕がある。
ずいぶん間隔が広くて細い轍だが、これ車の轍じゃないよな。
どっちかというと馬車みたいな感じか。
まぁ、とにかく行動してみよう。
しばらく歩けば、なんかわかるだろ。
そう気軽に考えて周囲を木々に囲まれた道を、俺は歩きだしたのであった。
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