第243話 身隠し味方 ①
カニ型ロボットの左右下部の砲口が赤く発光し、次の瞬間、無数のビームが放たれた。
亮は即座にバリアを展開し、降り注ぐ光線を弾き返す。
同時に、亮は巡航矢を放ち、空を漂う鳥と狼の思念体を次々と撃ち消していった。
しかし、音波干渉の影響で集中が乱される亮が唸る。
「くそ……状況が最悪だ!」
<マスクを装着>
オカスの指示と同時に、亮の頭部をフルフェイスマスクが覆った。
満月のように青く輝く円形の意匠。弓に矢を引くモチーフを象った眼部。
二本のシャフトが鼻筋を描き、矢羽は天を指し、鏃は口元を覆う。
顎には突起状のパーツが組み込まれ、後頭部からは鋭利な構造体が二本伸びている。
「このマスクは何だ?」
<毒ガス耐性、酸素補給、意識干渉音波の遮断機能を備えている>
これまで仮面を必要と感じたことはなかった。
だが今は、そんなことを考える余裕はない。
「……仕方ない。まずは戦場の主導権を取り戻す!」
亮はカニロボ兵へ向け、光弾を二つ射出した。
一つは頭上、もう一つは足元へ。
展開した円陣に向けてマナの矢を放つと、凝縮されたマナが無数の細矢となり、カニロボ兵を貫いた。
だが、接近してきた個体が右腕の鋏からビーム刃を展開し、斬りかかってくる。
次の瞬間、別方向から多重矢が命中し、ロボの体勢が崩れた。
混乱した動きが鈍る。
<残りマナ六射分。節約を意識しろ>
「……ボスを倒すまで撃てないか。なら、接近戦だ」
<弱点を狙え>
亮の視界に、オカスが解析した弱点部位がマークされる。
「五か所か……よし」
亮はオカスソリスを攻撃モードに変形させ、距離を取りながら機動する。
走りながらトラップ矢を放ち、カニロボの進撃を封じる。
展開したトラップに脚を取られ、ロボの移動機能が停止。
左手に弓、右手に破甲矢カッターを構え、亮は踏み込む。
ビーム砲を回避し、カッターで首部のセンサーを貫く。
一体、沈黙。
次の個体へ跳躍し、脚部と股関節を切断、蹴りで転倒させる。
更に次の敵のエネルギーコアを刺す。
正確無比な弱点攻撃で、亮は次々とロボを沈めていった。
一方、梨央を守るシャグネも攻勢に出ていた。
肩部から展開したバリアユニットが、カニロボ兵のビーム攻撃を防ぐ。
彼女は二丁拳銃を連射し、弱点を蜂の巣にする。
限界に達したロボ兵が爆散した。
「この程度なら、バスターモードで!」
銃のスイッチが押されると、銃身と先端のマズルが段階的に展開した。
腰のアンカーが地面に突き刺さる。彼女の体勢を強固に固定する。
一分間に五千発相当のマナ弾を一つに圧縮。
次の瞬間、狙い澄ました黄色のエネルギー波が撃ち放たれた。
二本の光の柱がそれぞれ3体のカニロボ兵を串刺しにする。
巨体は耐えきれず、ほぼ同時に崩れ落ちた。
優勢を取り戻したかに見えた、その瞬間。
頭上に浮かぶ親機が、さらに新たなカニロボ兵を投下する。
「くっ……!ボスを落とさない限り、ロボの増援は止まらないのか!?」
だが幸いにも、投下されたばかりのロボ兵たちの装甲に、謎の紋様が浮かび上がる。
次の瞬間、それらは空間ごと引き剥がされるように、どこかへ次々と転送され消失した。
正体不明の支援が、戦況を緩和していた。
しばらくの間、亮とシャグネは押し寄せる残存兵を迎え撃ち続ける。
やがて、あの不快な笛の音が、完全に途切れ、動物の思念体も消えた。
しかし、カニ型のセントマシンは、なお健在だった。
胴体底部には巨大な開口部が開き、内部に凄まじいエネルギーが充填されていく。
あの一撃が放たれれば、被害は梨央だけに留まらない。
レッドレンガ・ランド・スクエア一帯が、壊滅的打撃を受けるだろう。
アンカーを回収したシャグネが、銃を構えたまま叫ぶ。
「ちょっと!あれ撃たせたら、この辺一帯が消し飛ぶわよ!?」
「させるか!」
亮は弓を構え、青く輝く一本の矢を番えた。
同時に、弓身に並ぶ八つの砲口へとマナを流し込む。
光を纏った弓が、まるで飛龍のように咆哮した。
中央の一本は倍の幅を持ち、九本の光束が同時に斉射される。
直撃に当たった。
衝撃により、マシン底部で爆発が起こった。
「止めた!?」
シャグネが叫ぶ。
「おい、その台詞は戦場じゃ禁句だろ!」
「映画じゃないんだから、現実でしょ?」
だが、煙幕が晴れたその先で、セントマシンは、ほとんど無傷のまま浮かび続けていた。再びバリアが展開され、エネルギー砲のチャージが継続されている。
「あれだけの一射が……効いてない?」
<相手は多重バリアを展開中だ。八脚の関節部に内蔵された生成ユニットを破壊しなければならない>
亮が見上げると、カニ脚の関節部に、次々と赤いマーカーが浮かび上がる。
「全部で二十か所……。巡航矢なら一気に叩けるが、その後のトドメ攻撃が足りないかも……」
「だったら、そこは私に任せて。二丁銃のバスターモードなら、いけるわ」
「……やるしかないか」
亮は肩部から羽根を抜き、巡航矢を番えて弦を引いた。
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