第16話 神宮寺邸の侵入 ②
「何が起こった!?」
すぐさま、屋敷の中にある防犯センターから、執事服を着た男性がガードたちに通話した。
「フランス庭で爆発!!」
「不審者による襲撃の可能性があります!」
「こちら、状況確認のため向かいます」
各自報告を行うガードに、執事服の男が支持を与える。
「念のため、防犯ロボットを同行しなさい」
爆発に注目したガードたちが一斉にフランス庭へ向かう隙に、亮は飛び出した。一軒家の屋上を踏み台にすると、ブーツの強化機能を使って、身軽に跳び進む。着地音を抑えることも抜かりなかった。
亮の攻撃による爆発で、丈夫な屋敷本体もわずかに揺れていた。防音効果も優れた屋敷の中には、爆発音はほとんど聞こえなかった。電気システムにも影響は出なかったが、一瞬、屋内の照明が点滅した。
葉月はその時ちょうど、可愛らしく型抜きされたクッキーを並べたベーキングパンを、ビルトインオーブンに入れたところだった。軽い振動と小さな爆発音が聞こえ、葉月は首を傾げる。
「どこかのお祭りで、打ち上げ花火でもしているんでしょうか?」
一方の勇真は、わずかな振動に気付くと、「何だ」と呟いた。安らぎの時間は一変し、険しい表情になって湯船から飛び出すと、脱衣所で速やかに服を着て、
*
その頃、神宮寺邸寄りの、丘の裏側にある根岸森林公園では、停泊場から飛び立ったマシンが待機していた。ここが亮との合流ポイントだ。深夜の公園にはホームレスがうろついており、マシンは目立たないよう、ライトを消している。
操縦席に座る短髪の男は、現場の映像を見ながら報告した。
「キールス様、
自分の席に座っているキールスも、同じ映像を見ている。亮が神宮寺家に向かい、高速で一直線に進んでいる映像だ。間もなく亮は神宮寺の敷地内に入った。
「うむ。彼には申し訳ないが、ティアミスの警戒心を解き、神宮寺から奪還するには、そして互いのダメージを最小限に抑えるには、この方法しかない」
キールスがそう言った直後、マシンは急襲に遭い、強い揺れが生じた。
「キールス様、マシンが攻撃されています!!」
マシンが揺れに耐えきると、キールスが冷静に命じた。
「速やかにシールドを展開させろ。相手の攻撃手段を分析し、その正体を調べろ」
短髪の男は指示通りに動いた。
「これは……マナの反応です。しかもこれは、審判秘宝の使い手です」
「何じゃと!?外の映像を見せなさい」
映像が切り替わり、亮の姿が消える。代わりに見えたのは、中世貴族風のコートを着た赤い長髪の男だった。コートには、近未来化技術が使われている。男は片手に長い剣を翳した。
映像を見ている間に、男は蒼く光る刃を振り払う。斬撃に遭い、マシンは真っ二つに切断されると、オレンジ色の火球となって燃え上がった。
*
同時刻、亮は神宮寺家、敷地内に着地した。
作戦が上手くいったようで、亮が侵入した庭には一人のガードの姿も見えない。
亮はまっすぐに前を向いたまま走り出す。陸上で鍛えた脚力を活かし、助走で加速していくと、一気に屋敷の三階ベランダまで跳びあがった。
亮は部屋の窓に背を寄せて、こっそりと中を覗く。観音開きのフランス窓は意外にも、片側がわずかに開いていた。
音を立てないようにゆっくりと窓を開ける。
月の光に導かれるように、亮はその部屋の中で、少女と向き合った。
白い肌に銀色の髪のその少女には、王族の気品が備わっていた。その美しさは、単に「姫」という言葉では物足りない。神に創られ、地上に忘れ去られた一輪の花だ。亮は少女の、光るような美しさに言葉を失った。その人が、10年前、ペンダントを自分に預けたあの少女と同じ人物とは思えなかった。
唖然としている亮を見て、少女は少しも驚かず、麗しい笑顔を浮かべた。
「ご無沙汰している間に、とっても背が伸びましたね、亮くん」
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