憧憬転生〜憧れのゲーム世界、中盤に離脱する仲間キャラとして転生したので、とりあえずレベルだけは上げておきます〜

you-key

【憧れていたゲーム世界で、死亡離脱するキャラに転生してしまった!?】

現実世界〜転生まで

第1話【憧れを抱きすぎた男】



◇憧れを抱きすぎた男◇


 皆には、憧れのゲームってあるかな?

 ロールプレイング、シミュレーション、シューティング、恋愛、パズルゲームでもレースゲームでも、アプリゲームやアナログゲーム、カードゲームでもなんでもいい、この世に生まれた、素晴らしいゲームの数々だ。


 好きなゲームがあるだけで、不思議とやる気が出たりすると思うんだ。

 仕事や学校で疲れた心と身体を癒やしてくれる。

 時には腹がたったり、忙しさで離れる時期もあるだろうけど。でも皆の中にも忘れられない……他のどんなゲームよりも、誰よりも、大好きな作品があるはずだ。


 例えば論争でもいい。

 このシリーズは神ゲーだ。いいやクソゲーだ。

 このキャラが大好き。いやいやこっちのキャラの方が良い。

 このシナリオが最高。全然違う、こっちがもっと泣ける。

 このBGMが一生聞ける。おいおいアレンジ版もいいぞ。


 本当になんでもいいんだよ。なんでも。

 誇らしく、語るべくして語られる愛のあるゲームたち。当然、それは僕にもあるよ。その名も――【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ】。


 世界中で爆発的にヒットした大人気長寿RPG作品であり、シリーズ7作品+αを発売した、【ゼンダイカムホクニエアー】作、社内売上歴代ナンバーワン、最高の傑作だ。


 その名の通り、銀河ギャラクシーを世界観とし、登場人物をソウルに例えて進行するSF作品だ。

 多種多様な種族、いくつもの惑星、様々なやりこみ要素。

 ミニゲームや恋愛要素に、サイドストーリー、そしてユーザーに一番評価されたのは、やはりその戦闘システムだ。

 RPGならではの爽快な戦闘、それを華やかにさせるBGM、やりごたえのある難易度、多彩なキャラクター。


 時には年間大賞を獲得し、初代である1作目から神ゲーと呼ばれ愛されて来たんだ。だけど、その快進撃もシリーズ4作品目までだった……時代の流れを取り入れ、初の3D作品として発表されたシリーズ5作品目。そこで、世界からの評価は一転した。


 ありえない程の致命的なバグの数々。

 当時最大の目玉として出したものの、3Dキャラクターのチープなクオリティ。

 作品愛のない新規のシナリオライターを起用した結果、歴代作品との整合性の取れないめちゃくちゃなシナリオ。

 BGMが某有名ゲームのパクリなのではと言われたり、更には当時、人気だっただけのタレント数名を声優として起用し、当たり前だが不評だった。


 もう燃えたよ、それは燃えた。子供だった僕でも酷い出来だと嘆いたのだから、当時の大人たちはさぞ激怒しただろうね。

 その結果、発売からたったの一週間……【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ5】はワゴンの中だった。所謂いわゆる、投げ売りだね。


 そうなれば当然赤字になり、評価は真逆、神ゲーはクソゲーの烙印を押され失墜。

 開発会社【ゼンダイカムホクニエアー】でも評価は下がり、次回作からの予算も大幅に削られてしまったそうだ。

 そこから数年、次回作である6作品目、7作品目をリリースするも、結果は泣かず飛ばず……かんばしくなかった。


 だから、開発チームはアプリゲームに手を出した。

 歴代キャラを総出演させ、いわゆるスターシステムで昔からの顧客を取り戻そうとした訳だ。売上はまぁまぁで、三年は続いた。いや、時代的に……三年、かな。

 だから、この売上でシリーズ最新作が作れるのではと、そう言われていたさ。


 そんな時期だったかな、僕……笹鷺さささぎ幾太いくたが開発チームに加わったのは。

 実は開発会社への入社自体は、専門学校卒業後に出来ていたのだけど、まぁ配属は中々ね。だけど、夢でもあった【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ】の制作現場。

 そこに配属されたともなれば、中途半端だったやる気も出るというものだ。

 身を粉にして、命を賭して最新作……【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ8】の開発に尽力したさ。


 子供の頃から憧れていたゲーム。そんなゲームの開発にたずさわる事が出来て、しかも自分の力が少しでも役に立ち、その結果クソゲーから神ゲーへの再起となるなら(予定)、命なんて軽いものだと思っていたんだ。


 そう……実際に、命を賭すまでは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る