第45話 龍が我が家のペットになりました

「天使な天使な息子のシャルルちゃん! 今日もあなたはなんでそんなに可愛いの!」

私の胸の中でシャルルちゃんがきゃっきゃっ言って喜んでいる。


「ギャーーーー」

「ああ、もう、むっちゃくちゃ可愛い」

私は天使な息子のシャルルちゃんの頬をつついた。


「ギャーーーー」

「ブー」

シャルルちゃんが首を振っていやがる。

ほっぺたをつつくのがやはりお気に召さないみたいだ。


「ギャーーーー」

「あのう、お嬢様、先程から外が騒がしいですが、宜しいのですか?」

アリスが聞いてきた。


「ええええ! 今、天使な息子のシャルルちゃんと良い所なのに!」

私が文句を言うと、

「ギャーーーー」

更に断末魔のような悲鳴が聞こえてきた。


「本当に仕方がないわね」

私は肩を竦めると


「龍之介、お座り」

私は後ろで騒いでいるドラゴンに命じたのだ。


ドラゴンはピシッとお座りしてくれた。


その途端に、どさりという音と共に、口に咥えられていたエドが落ちてきた。


「痛ててて」

エドが腰を押さえて何とか立ち上がった。


「龍之介、こんなに汚い物で遊んでたらダメよ」

私は龍之介に注意した。


「ジャンヌ、貴様、被害にあった俺に何か言うことはないのか?」

怒って、エドが叫ぶが、


「勝手に来るあんたが悪いんでしょう!」

「お前な!」

エドが何か言いそうにしたが、私は可愛い天使な息子のシャルルちゃんの世話で忙しいのだ。いい加減に邪魔するのは止めてほしい。


「というか、ドラゴンなんて、何でペットにしているんだ!」

エドが言うんだけど、

「知らないわよ。勝手に来ちゃったんだから。ほっておいたら大変でしょ。下手したら王都が壊滅するわよ」

そう、私は親切にも、現れた龍をペットとして飼うことにしてあげたのだ。そのまま、外に放したら、暴れまわって下手して、国が壊滅しても困るし。


「わざわざ首輪までつけてあげたじゃない。なんなら王宮で飼ってくれるの? 餌代だって馬鹿にならないんだからね」

私が言うと、

「いや、お前が討伐すれば良いだろう! 前みたいに」

「エドって野蛮ね」


「野蛮?」

エドの目が点になる。

「だって、お腹見せて降伏してきた龍を討伐なんて、天使の心を持つ私には出来ないわ」

「はああああ! ただれが天使の心だよ! 龍が許してくれって泣きわめいたのに『もっと泣け』って言って泣かせたお前が言うか?」


「なに言っているのよ。その時龍から採取したドラゴンドロップは全てあなたのお母様に差し上げたじゃない。それ言うなら、血も涙もないのはあなたのお母様になるんだけど、今度お会いしたら、エドがそう言っていたって話してあげるわ」

「余計なことを言うな!」

エドが今度は青くなって言うんだけど、事実だから良いと思う私は決して悪くないはずだ。


「いや、それだけはなんとか」

エドが今度は頭を下げてきたんだけど、一体何なのよ。本当に面倒くさいわ。


「で、今日は何をしに来たの?」

私が、いい加減相手にするのも疲れてきたので聞いた。


「いやあ、また、母がうるさくてだな」

エドが頭をかいて言ってくれるんだけど、


「えっ、また、来いっておっしゃっているの? うちには、第二王子と龍之助と面倒なのが2匹も増えたんだけど」

「おい、第二王子を動物みたいに数えるな」

私の言葉にエドが文句を言ってくるんだけど、本当に煩くない?


「と言うよりも、あんたのお相手なんてあなたが見つけなさいよ。私は3人の子育てに忙しいのよ」

「おい、王子とドラゴンを一緒くたにするな」

またエドが文句を言ってくるんだけど、


「あんたね。今度はちゃんと王子を匹じゃなくて人って数えてあげたでしょ。本当に煩いわね。というか、天使な息子のシャルルちゃんと同じ扱いにしてあげたんだから感謝してほしいわ」

いい加減に面倒になってきた。


「というか、いい加減に毎日毎日王宮に行くのは勘弁してほしいんだけど」

私が言うと

「ジャンヌからなんとか断ってくれ」

エドが頼んでくるんだけど、


「そんなの出来るわけ無いでしょ」

「そこをなんとか。お前なら言える」

「あんたの母親なんだからあんたが言いなさいよ」

「言えたらとっくに言っている」

私の言葉にエドが反論してくるんだけど。


そんな私達を陰から見ている男のことなんて私は気にしてもいなかった。


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