第42話 娼婦女が付き纏ってくるんだけど
「な、何なの、あの女! 本当にムカつく。絶対に許されないわ」
王宮から帰ってきた後、私はアリスに愚痴っていた。
「聞いてよアリス! あの女、私のことを胸のないペチャパイって言いやがったのよ! 今は天使な息子のシャルルちゃんにお乳を上げているから大きいはずなのに!」
「まあ、お嬢様は元々小ぶりですからね」
なんか、アリスまで酷い事を言ってくれるんだけど……
アリスは私と違って元々ふくよかなのだ。
本当にムカつく!
私がギロリと睨みつけても昔からの侍女のアリスはびくともしない……
「でも、お嬢様。せっかく、その破廉恥女が王太子殿下にちょっかいを出してくれたんだから、そのままおまかせすれば良かったですのに」
アリスが言ってくれるんだけど……
「しかし、あの女は私のことを年増のペチャパイ女って言ってくれたのよ」
私はムッとしてアリスに言った。
「それはお嬢様がその女を許せないと思われるのは当然ですが、じゃあ、お嬢様が王太子妃になられるのですか?」
「そんな訳無いでしょう」
私はアリスの言葉を即座に否定した。
「じゃあ、ほっておかれたら方が宜しかったのでは? このまま行くとお嬢様が王太子妃にされる未来しか見えませんが」
アリスが言ってくれるんだけど……
「それは嫌よ。そもそもなんで私があのエドにの相手にならないといけないのよ」
私はムッとしていった。
「私も最初はエドに近づく女がいたんだから、その女でいいと思ったのよ。エドをその場に置いていこうと思ったわ。でも、あのムカつく女、私に年増のペチャパイ女なんて抜かしやがったのよ。いくらエドなんかどうでも良いと思っている私とはいえ、あんな女が未来の王妃様になるのだけは許せないわ」
私は言い切ったのだ。
そんな私をアリスは呆れたように見ていたのだった。
「殿下!」
それからも、娼婦女は、私がエドと王宮を歩いていると何処からともなく現れて絡んでくるのだ。
いい加減にしてほしかった。
その度に歩くのが止まるし、エドを置いていっても良いのだが、なんかそれはそれでムカつくし。
「さすが年の功ですわね」
とか、「胸のない人はいいわ。胸が大きくて苦労することはないんだから」
とか、人がムカつくことを平気で言ってくるのだ。
さすがの温厚な私もいい加減に切れかけたのだ。
アリスが聞いたら「お嬢様、温厚という意味をもう一度調べ直されたほうが良いと思いますが」とか、言いそうだったけれど。私もシャルル様と結婚してからは温厚になったのだ。これでも……
違ったら一回目の時にあの破廉恥女を雷撃で燃やしていた。
昔の私が知ったら目を見開くほど我慢強くなったのだ。
しかし、さすがの私もそろそろ我慢の限界だった。毎日毎日破廉恥女は邪魔してくるし、王妃様の所に行けば行ったで、エドと一緒になったらどうだと王妃様に勧められるし。
そして、この日はついに王妃様のお茶会にまで、その破廉恥女はいたのだ。
私とエドが王妃様のお部屋に行くと
「ああ、ジャンヌ、良いところに来たわ。今日は辺境伯のイライザ嬢が来ているのよ」
元気な王妃様に紹介されたのだ。
私はうんざりした。
「これはオルレアン侯爵未亡人様。お久しぶりでございます」
この娼婦女は未亡人の所を強調して挨拶してくれた。
まあ、シャルル様に操を立てている私はそう言われても全然問題ないと思ったんだけど、なんか引っかかる。
それに昨日も廊下で会ったところではないか。久しぶりなんて本当に白々しい。
私も娼婦女と言い返してやろうかと思ったけれど、さすがにそれは止めた。
「お久しぶりね。イザイザ様でしたかしら」
私は破廉恥女に自己紹介もされていないんだけど、名前だけは知っていたので言ってやった。
「左様でございます。侯爵未亡人様。王妃様が良くお茶会をしていらっしゃるとお伺いして、無理言ってお頼みして参加させていただいたのです」
イザイラはしおらしく言ってくれた。最初だけ……
「侯爵未亡人様も子育てが大変ですのに、王妃様を2日に開けずにご訪問なさっているとか。本当に忠義に厚いお方ですわ。でも子育ても大変でしょう」
この阿婆擦れ女、なんか言ってくれるんだけど。
「そうですわね。私もこのシャルルの世話が毎日大変で、王宮にお邪魔するのも中々大変なのです」
私はつい頷いてしまった。本当に毎回この破廉恥女を相手するのも疲れたし、出来たら侯爵邸でシャルルと二人で過ごしたかった。
「左様でございましょう! 私も聞いておりますわ。子育てがいかに大変なのか」
なんかこいつに言われるとムカつくのはなぜだろう?
「そのような子育てでお忙しい侯爵未亡人に毎日この王宮に来て頂くのは忍びないですわ」
なんかこの娼婦が言ってくれた。
確かに私もいい加減、毎日この王宮に来るのは疲れていた。
それにこの女の相手をするのも……
「イライザ、あなた、何が言いたいの?」
でも、私が頷く前に王妃様が、少し、不機嫌そうな顔で、イライザを睨み付けておられるんだけど。
「いえ、王妃様。侯爵未亡人様は、子育てでお忙しいと存じまして。私の方が、未亡人様よりも若く、ピチピチしておりますし、何でしたら私めが侯爵未亡人の代わりをさせて頂いても宜しいかと」
破廉恥娘は申し出てくれたのだ。
私も頷いても良いと思ったのだが、
「だまらっしゃい! このジャンヌは私が無理言って来てもらっているのです。あなたなんかじゃ代わりは務まりません!」
王妃様が、大声で叱責されたのだった。
その時の破廉恥女の顔が見ものだった。
ぽかんとした顔をして王妃様の顔を見ていた。
「しかし、侯爵未亡人は全公爵様との間にお子様までいらっしゃります。そのような者を王家に迎えラルなど」
「辺境伯令嬢。私が黙れと行っているのに、まだ話すの」
怒髪天の王妃様を見て、さすがの破廉恥女も慌てて尻尾巻いて逃げていったんだけど……
私はいい気味だと笑ってみていたのだ。
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