第40話 第二王子を鍛えました
私が王宮から第二王子を連れ帰るとアリスがギョッとした顔で出迎えてくれた。
そして、疲れ切っていたのか、第二王子は馬車の中で既に寝ていた。
今は別室で護衛騎士と侍女に囲まれて寝ているはずだ。
「お嬢様、どういうつもりなのですか?」
アリスが私に問いただしてきた。
「だって仕方がないじゃない。元々あの子から母親を取り上げたのは私だし、あんなことがあったから、あの子は王宮にもいずらいと思うのよね」
私が言い訳すると
「だからといってこの館にお預かりするなんて、人が良いにも程がありますよ」
アリスは呆れ果てていた。
「それでなくても、館の人員を精査して、入れ直している時に、外部から新しく人を連れてくるなんて信じられません」
ムッとしてアリスが言ってくれた。
元々私達の離れには侍女なんてほとんどいなかったし、本館に居た者たちは大半が伯母が雇った面々だった。そして、今回の騒動で信用ならないものは解雇したのだ。まあ、メリーみたいにそのまま引き継いで働いてくれているものも居たが、大半は新たに雇い入れた者たちだった。そんな所に第二王子を世話するために引き取った事に対してアリスは怒っていたのだ。
「まあまあ、アリス。王子の世話は連れてきた騎士とか侍女がやってくれるから」
さすがに身一つで王宮から出すのも悪かろうということで、王妃様が、近衛騎士5名と侍女5名をつけてくれたのだ。
「それも良くありません。身元の良くわからない面々をお館に入れるなんて」
「何言っているのよ。王妃様がつけてくれたんだから身元のしっかりしたものだと思うわ」
アリスの言葉に私が反論すると、
「何を言われるんですか。身元の確かな人間ということは何処かの貴族の子弟か騎士や侍女の子弟という事でしょう。必ずしも我々の味方とは限りません」
アリスがきっぱりと言い切ってくれたんだけど……
「でも、それは元々じゃない。前は伯母の味方も多くいたんだし、私達を恨みに思うものも多くいたと思うわ」
私が言うと、隣にいたメリーがすまなさそうにするんだけど。
「大丈夫よ。メリー。私はメリーは信じているから」
私が笑いかけると
「ありがとうございます」
メリーがぎこちなく頭を下げてきた。
まあ、天使な息子のシャルルちゃんを拐おうとしたのだから、そのぎこちない反応も仕方がないだろう。
「本当にお嬢様は人が良すぎます」
そんな私達にアリスが言ってくれたけれど、私は問題ないと思っていたのだ。
そして、翌日、私は天使な息子のシャルルちゃんをメリーとアリス、それに急遽呼び出した弟に任せて、ダグラスを伴って少し離れた平原に行ったのだ。
ここは、過去に大戦のあった場所で、見渡す限り、荒野が広がっていた。
ダグラスは少し緊張した面持ちをしていた。
「さあ、ダグラス、今日からあなたは私の息子よ。私の事は母親だと思ってくれて良いわ」
私は言いきったのだ。
「何と言うことを言われるのです。ダグラス様は畏れ多くもこの王国の第二王子殿下ですぞ。侯爵家の未亡人風情が、息子など……」
そう言う騎士の目の前に爆裂魔術をお見舞いした。
ズカーーーーン!
騎士の目の前を通過した炎が、遠くで凄まじい爆発を起こす。
騎士や侍女達は固まってしまった。
「お黙り、これは王妃様にも言って了解を取ってあることよ」
私は騎士達を睨め付けた。
「どのみちエドが王位を継いだら、ダグラスは臣籍降下するのだから。今は形だけだけど、私の庇護の下に入るのはダグラスに取っても良いことよ」
私はニタリと笑ってやったのだ。
昔ならその生意気な騎士を張り倒していたけれど、私も本当に丸くなったものだ。
「ダグラスは魔術使ったことはあって?」
「少しはある」
私の問いにダグラスが自信なさげに言った。
と言うことはほとんど使えないということだろう。
まあ、王族なんだから、大切に温室の中で育てられていたんだろう。エドみたいに。
まあ、エドは徹底的に鍛え上げたので、少しは通用できるようにしたけれど……
「じゃあ、やってみて」
私が促すと、
「こんなところでか」
目を見開いて、ダグラスが聞いてくるんだけど……
「こんなところだからいいんでしょ。周りに何もないから思いっきり出来るわよ」
私は笑って言ってやった。
「わかった」
ダグラスは頷くと、横を向いて、足を肩幅に開いて、手を突き出す。
「ああ、神よ、我が願いを聞き届け賜え!」
なんかダグラスが手を上に揚げて祈り出したんだけど……
「神の導きによって、我がダグラスが命ずる。炎を出でよ」
散々祈った後でダグラスが出したファイアーバールはとても小さかった。
それもすぐに消えてしまった。
私は盛大にため息をついた。
「ダグラス、お祈りは教会でやりなさい」
私は首を振った。
「貴様、神を冒涜するのか! 魔術は神の許しを得て使うのだ」
さっきの騎士が、突っかかってきたが、戦場で悠長に祈っていたら、敵に斬り込まれて終わりだ。
こいつらは実戦を知らないのか?
私はつくづく嫌になった。
まあ、仕方が無い。ここは見本を見せよう。
「ダグラス、よく見ているのよ」
なおも叫んでいる騎士を無視して、私はダグラスを見た。
ダグラスがこちらを見たのを、見て、
「いっけー!」
私は大声で叫んだのだ。
私のてから巨大な火球が出きると、凄まじいスピードで、先にある山にぶち当たった。
ピカッ
ドガーン
凄まじい、爆発が起こった。
爆風で、吹き飛ばされそうになり、騎士達は慌てて伏せた。
爆炎が、風邪で消え去った跡に山は影形なく消えていた。
「「「えっ!」」」
男達は口を開けて私と山のあった跡を見比べていた。
「判った? こうするのよ」
私の言葉にダグラスはただ頷くしか出来なかった。
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