続・転生したのは妹で、俺は妹のチートスキル

ももぱぱ

第1話 やっちまったようだ

本作品は「転生したのは妹で俺は妹のチートスキル」の続編になります。

前半139話、本編75話となっております。

よろしければ暇つぶしにどうぞ!

「転生したのは妹で俺は妹のチートスキル」↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330663864669656

———


「オンギャー、オンギャー!」


(っん? んん?)


「おめでとうございます! 可愛い女の子ですよ!」


(おんな……のこ?)


「頑張ったな! ……ァ 待望の女の子だぞ! 」


(何だ? よく聞こえない……)


「ふぅ、ありがとう! あなた、次は女の子がほしいって言ってましたからね。うふふ!」


(あなた? 女の子がほしい?)


「それは君も同じだろう! 名前だってもう決まってるし!」


(名前? あれ? 俺の名前は何だ?)


「ええ、私達を……いえ、この世界の救ってくれたあの子の名前をもらうってふたりで決めましたからね」


(世界を救った? そういえば、そんなこともあったような?)


「ああ、この子の名前はもう決まっている。こんにちは、アスカ!」


(アスカ!? そうだ、アスカはどこだ!?)





  ▽▽▽





 俺の名前は柊翔ヒイラギショウ。日本生まれの日本育ち……だったのだが、中学3年の時、2つ下の妹と自転車で帰宅途中にトラックにはねられ、なぜか異世界に転生してしまった。しかも、妹のスキルとして……


 転生した先では、魔法やスキルが存在するような世界で、そこで俺はスキルを自由につけることができるチートな能力をフル活用し、妹が幸せに暮らせるように最大限のサポートをしたのだが……


 結果は、妹を自殺に追い込んでしまったのだ。まあ、自殺と言っても転生魔法を使った上での自殺だから、復活する予定ではあるのだが……。それでも、失敗する可能性がないわけではないので、これに関しては大いに反省しなければ。


 そこで……だ。今の状況を冷静に分析してみると、どうやら転生は成功したようだ。ただし、今度の転生は生まれたての赤ん坊からのスタートのようで、アスカと意思疎通ができない。

 つまり、アスカを通して情報を得ることができないので、周囲の状況から自分で情報を集めなければならないというわけなのだ。


 よし、やってやろうじゃないか! まずはここがどんな世界で、赤ん坊であるアスカに危険があるのかどうかを判断しなければならない!


……しかし、それはすぐに判明した。この世界がどんな世界どころか、一目でこの世界の全てが分かってしまったと言っても過言ではない。





 どうやら、やっちまったようだ……





 だって、アスカの父親と母親がキリバスとソフィアなんだもん……


 いや、これはないっしょ。転生の女神システィーナさん、どうなっちゃってるんですか? といっても、今回は女神様に会えなかったな? もしや、自力での転生だと女神様を通さないのか。


 キリバスとソフィアの会話から察するに、どうやらアスカがいなくなってから5年ほど経っているようだ。

 キリバスは父親そっくりの落ち着いたイケメンになってるし、ソフィアはますます綺麗になっている。

 そして、アスカが俺の視界のオンオフができないもんだから、常に俺の視界はオンなんだよね。ソフィアがアスカにミルクをあげるときや、お風呂に入れるときも……


 もうスキルである俺に性別はないけど……ごちそうさまです。


 冗談はさておき、いや冗談ではないんだが、今わかる状況を整理すると、アスカがいなくなった後、キリバスとソフィアはともにSランクに昇格し、一緒に各地をまわっていたようだ。まあ、あいつらならSランクに昇格するのは簡単だっただろう。

 そして、1年後に結婚し、さらにその1年後に男の子を授かった。つまり、今のアスカにはお兄ちゃんがいるわけだ。俺以外のお兄ちゃんが。

 

…………なんだろう。ちょっとイライラする。


 そして、その2年後にアスカが生まれた。ということで、アスカには2歳になる兄がいて、名前はルークという。

 なんでお金の単位を名前にしたんだか。紛らわしいったらありゃしない。という疑問はさておき、このルーク、当然と言えば当然なのだがメッチャ可愛い。

 そりゃ、イケメンのキリバスと美しいソフィアから生まれたんだから、どう考えても将来イケメンになるに決まっている。そういう意味では、アスカも美人が約束されたようなものだ。


 それから俺のスキルだが、転生前と全く同じ能力だった。その名もスキルナビゲーター。レベルは最大の5。

 まあ、つまりだ、全てのスキルをLv5で自由につけたり外したりできるということだ。だが、その能力をフル活用しアスカを守ろうとすれば、結局は転生前と同じ結果になってしまう。 それは何としても避けなければならないので、これに関してはアスカの自我が芽生える前までに考えておかねばなるまい。


 そして、アスカはというと、鑑定の結果が……


 《鑑定》


 名前 アスカ・ライトベール 人族 女

 レベル 1

 職業 赤ん坊

 HP 10(8315)

 MP  0(8325)

 攻撃力 1(8315)

 魔力  1(8335)

 耐久力 1(8315)

 敏捷  1(8325)

 運   8325

 スキルポイント 0

 スキル

 なし

 ※3歳までは赤ん坊補正、10歳まで子ども補正がかかる


 ……いやいや、これはだめだろ!? 今は補正がかかってるからいいが、10年後には無敵の10歳児の誕生じゃん!

SSクラスの魔物や魔王ですら瞬殺できる10歳児って、何の冗談だ? また、頭が痛くなる悩みが増えてしまった。このステータスを10歳までに何とかする方法を考えてなくては。って、運には補正かかってないじゃん!

 運8325って何が起こるんだこれ!? ある意味楽しみだわ!!


 ふう、思わず取り乱してしまった。とりあえず気を取り直して、世界情勢を確認しよう。

 まずはアスカが倒した魔王シン・クリムゾンだが、流石は契約を重んじる種族。ちゃんとアスカとの約束を守って、彼が支配する魔族達は、他の種族への攻撃を止めたそうだ。

 ただ、他の種族を守るというわけではないし、魔王に与しない魔族もいるので、必ずしも、魔族が人を襲わないというわけではないようだが。


 それからクランホープのメンバーだが、彼らは時々この家を訪ねてくれているようだ。学園でソフィアの護衛兼友達だったミスラは、ソフィアが結婚してから一人で行動するようになり、Aランク冒険者として名を上げている。


 ノアとクラリスのエルフ兄妹は、自分達の国に戻り、ノアが族長として、クラリスがそのサポート役として頑張っているそうだ。


 ドワーフとのハーフで赤髪のアレックスは、結局、鍛冶屋を継ぐことに決めたようで、父親の元で修行している。

 ただ、戦闘能力も高いので自分で鉱石を採りに行くのはもちろん、よく魔物の討伐を依頼されては引き受けているそうだ。それと、キリバス達と同時期に結婚したらしく、ひとり息子がいるらしい。


 父親が魔法団の団員だったトーマは、父親の後を追うように王都の魔法団に入ったのだが、入団時点で団長を超えていたようで、次期団長の呼び声が高いと言われている。


 格闘少女だったメリッサは、活動の場を帝国に移し、そこでAランク冒険者として活躍している。おそらく、帝国と王都の関係維持のために、敢えて残ってくれたのではないかと思われる。


 槍使いのジェーンは、キリバス達と同じように別の冒険者と結婚し、今、子育てに励んでいる最中だ。

 その子はアスカの兄ルークと同い年で、時々、子どもを連れて遊びに来るらしい。残念ながら、昨年旦那さんとは別れたようで、今はシングルマザーとして頑張っているようだ。


 そして、俺が大好きだったミーシャだが、何でもゴードンと一緒に活動しているそうだ。

 といっても、ゴードンがミーシャを追いかけ回しているという感じで、ミーシャはうんざりしながらも、やはり知った仲で戦いやすいという理由で、クエストを受けたときはゴードンを誘うようにしているらしい。

 ただし、プライベートのお誘いは、全て断っているとのことだ。


 他にも、レコビッチ商会はこの王都で名実ともにNo.1になったようで、その支店となったベン&ソニアマートも、今や従業員を100人以上抱える大型店舗に成長している。この辺の情報は少ないので、アスカがもう少し成長しないと、詳しいことはわからないな。


 それから、同じ日本からの転生者タチバナケンヤは、聖都クラリリスで騎士団長の職に就いているらしい。確かに最後に会ったあの感じだと、セーラとも上手くやっていけるのではないだろうか。同郷の身としては、彼の活躍は喜ばしいことだ。





 アスカは生まれたての赤ん坊なので、これらの情報を集めるのに2週間もかかってしまった。そして、これからアスカをどう育てていくのかなのだが……。正直、どうしていいのかわからない。ステータスを隠すために、隠蔽は付けなければならないとして、他のスキルはどうすればいいのか……


 キリバスとソフィアは、どちらの力を受け継いでいるのか楽しみにしている節がある。兄のルークは、生まれつき剣術スキルを持っていたようで、キリバスが『俺より強くなってほしい!』と事あるごとに口にしていた。

 だからだろうが、ソフィアはアスカが操作系を持っていることを期待している感じがする。


 それでも俺は、アスカにスキルをつけるかどうか迷っていた。ここで、スキルをつけるということはアスカの将来がある程度確定することに繋がるからだ。

 そして、俺は迷いに迷った挙げ句、攻撃系のスキルをつけないことにした。キリバスもソフィアもがっかりするかもしれないが、アスカの3度目の人生は、平穏で穏やかなものにしたかったのだ。


 ただし、アスカを守ると誓った言葉に嘘はない。ということで、全属性耐性と全状態異常耐性はつけさせてもらう。もちろん隠蔽Lv5で完璧に見えないようにさせてもらうが。


 そして、2週間が過ぎた頃から、アスカの誕生を祝いにクラン"ホープ"のメンバーがここを訪れ始めたのだった。

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