第119話 特性
私の友人の憲介が、同じく友人の志摩子に恋をした。
「あのコは、筋肉ムキムキな人が好きなんだよ」
私の助言を聞き、きゃしゃな憲介は体を鍛え、ボディビルダー並みになった。しかし——。
「どうして駄目だったの?」
「だって、あの人……」
本人からは口にできなかった、志摩子が断った理由を、私は憲介に教えた。
「あんた、外国人がやりがちな、力こぶにキスをしたでしょ? あれが気持ち悪かったって」
「そうか。じゃあ、しょうがねえな」
そう言うと、憲介はまた自分の力こぶにキスをしたのだった。
どうやら男の人は体を鍛えると、女よりも自分を好きになってしまうようだ。
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