第100話 たかられる

 会社で、中年の男性が別の中年の男性に話しかけた。

「どうかされましたか? お暗い顔をされて」

「ええ、実は昨日、たかられてしまいまして」

「え? 恐喝被害に遭われたんですか?」

「いえ」

「ならば、失礼ですが、お子さんにお金をせがまれたということですか?」

「そうではなくてですね」

「はい」

「ハエに、です」

 二人はその後しばらくの間、むなしさで口を開かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る