第68話 柿

「どうしたの? 叱るような声が聞こえたけど」

「近所の坊主が、うちの庭の柿が落ちて、服が汚れたって言ってきた」

「え? また? 前もあったよね?」

「だから、それを見ての嘘なんだよ。あのとき、お詫びに綺麗な柿をあげたろ」

「そういえば、うちの家の前をうろうろしてる子どもがいたな」

「え? じゃあ、嘘じゃなかったのか?」

「でも、柿が落ちてくるのを待ってたんじゃない? 同じようなもんでしょ」

「いや、それでも、労力を使ってるわけだし、そこまで叱ることはなかったな……」

 そうして、男性は男の子を見つけて謝罪し、綺麗な柿をプレゼントした。

 その後、男の子は立派な詐欺師になったのだった。

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