第16話 クセ

「後田教頭。あなたのような素晴らしい人は、校長を目指すべきです」

「でも……」

「何か心配なことがおありですか?」

「娘が恥ずかしく思うんじゃないかと」

「そんな。シャイな娘さんでも、きっと理解してくださいますよ」

「……わかりました」

 そうして、彼女は校長になるための関門をくぐり抜け、その座に就いた。

「ママさー」と、彼女の娘がガムを噛みながら話しかけた。

「どうして生徒に賞状をあげるときの『表彰状ー』の言い方がカタコトな感じなの?」

「なんでか、そうなっちゃうのよ。恥ずかし!」

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