第13話 意外とそんなものです

「総理! 一言でいいので、何かおっしゃってください!」

 上原壮馬は総理大臣である。

 彼は、自身や他の大臣の、失態や不祥事や疑惑が続き、マスコミに追い回されている。

「二十五日はどこにいらっしゃったんですか?」

「八木大臣の件ですが——」

「唇が赤いですけど、昼食はナポリタンだったんですか?」

 すると上原は足を止めて、一番後に質問した記者をキッとにらんだ。

「ミートソースです」

 そう述べ、再び口を閉ざして歩いていった。

 それが、彼が総理大臣として発した最後の言葉だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る