お笑いミニ話

柿井優嬉

第1話 素敵な話

 真夏の時期に、建設現場の前で、幼い子どもが言った。

「お母さん。あの、扇風機みたいのが付いてる服が欲しいー」

「何言ってるの。まーくんには扇風機みたいのが付いてる服は必要ないでしょ」

「えー、欲しい、欲しい。ねえ、扇風機みたいのが付いてる服、買ってー」

「扇風機みたいのが付いてる服は多分高いから、駄目」

「坊主。扇風機みたいのが付いてる服が欲しいなら、やるよ。新品のをな」

「ほんと? やったー。扇風機みたいのが付いてる服ー、扇風機みたいのが付いてる服ー」

「おっと。いいんですよ、お母さん。私が、子どもが好きで、あげたいだけなんですから」

 その場面を、偶然通りかかって目にした人々は微笑ましく思った。

 そして全員がその後、扇風機みたいのが付いてる服の名称を調べたのだった。

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