花屋

次の信号

花屋

とある花屋

店員が一人、レジで作業をしている

こぢんまりとした店内は今日も色とりどり


と、男が一人やって来る


「いらっしゃいませぇ」


店内を見て回る男


「すみません」

「はい」

「ひょうたんてあります?」

「ひょうたんもう全部出ちゃったんですよぉ」

「あ」

「さっきまであったんですけど」


どうしたものか

男は他の手を考える


「舌先さんの家へ行かれるんですか?」

「あ、はい」

「本当ついさっき、女性の方が」

「あ、そうなんですね」


「ありがとうございました」


男はひょうたんを諦めると店を出ていった

見送った店員は再び作業に戻る


と、暫くして女が一人やって来る


「いらっしゃいませぇ」

「すみません」

「はい」

「ひょうたんあります?」

「ごめんなさい、ひょうたん全部出ちゃったんですぅ」

「あ」


どうしたものか

女はひょうたんを諦めると、花を選んでレジへと向かう


「これ、お願いします」

「舌先さんの家へ行かれるんですか?」

「あ、はい」

「さっきも一人、男性の方が」

「あ、そうなんですか」

「ひょうたん、いつもはあるんですけど」


女は勘定を済ませると花束を抱えて店を出ていった

店員は今出たゴミを片付けて再び作業の続きに戻る


「すみません」


作業を終えてフロアに出てくると、店先から男が声をかけて来た


「ちょっと聞きたいんですけど」

「はい」

「舌先さんの家ってどう行けばいいか分かります?」

「あー、えっとですね、あそこにお蕎麦屋さんあるじゃないですか」

「あー、はい」

「あそこを左に曲がった一個目の信号を右に真っ直ぐ行くと見えてきます」

「一個目を右に真っ直ぐ」

「はい」

「ありがとうございます」


男は軽く頭を下げると店を後にした

店員は男を見送ると、フロアの花に目を向ける


「すみません」


作業を始めると間もなく、直ぐまた男が声をかけてきた

振り向くと今しがたの男が立っている


「あれ、どうしました?」

「ひょうたんてあります?」



終わり










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花屋 次の信号 @tsuginosingou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画