アベノ・アミクルムス

洞廻里 眞眩

序章 とある土蜘蛛の精の独白


 



  Tō Tō Tarari Tararira Tarari Agarira Raritō Tō Tarari


 千歳ちとせの時を経てもなお


 私は御供いたします


 鶴亀の如く生き永らえ


 さちを心のままに得る


 Tiriya Tarariya Tarari Tō



 私こそは、かつて今代こんだいの帝の御世みよを大層お騒がせしました、とある土蜘蛛の精で御座います


 今代の陰陽頭おんみょうのかみ安倍晴爛あべのはるらんの名のもとに調伏されましたので、これより死にゆく彼に代わり、私自らが懺悔いたします


 どうかお聞きください


 私は安倍晴爛の外套がいとうとして、彼にとり憑く悪鬼でありました

 

 彼は転生てんじょうの理を外れ、世をさまよう稀有な荒魂あらみたま


 とある幼子の身体に、彼の魂は宿り


 第二の生を受けることになったのです


 しかし、彼はその魂に、かつての記憶と呪いを残したことで、多くの苦悩を抱えておりました


 そんな彼と、彼の抱える呪いの一つである、私の懺悔ざんげ


 どうかお聞きください


 いつか


 呪いが呪いと変わるまで


 すさむ心がしずむまで



 ……



 鳴るのは滝の泉なり


 鳴るのは滝の泉なり


 陰陽おんみょうが御世を照らすとも


 水は絶えず 


 流れゆく

 

 とうとうと


 Ariu Tō Tō


 Tō Tarari Tarariya

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る