第103話 忍び寄る危機

「あ、ひょっとして自分で確認取ろうとしてる?」


 茉莉に。

 俺が携帯端末を弄って、星間メールで妹にメールを打とうとしていることに気づかれた。


 俺は


「ああ」


 別に誤魔化す理由が無いし。

 素直に認める。


 気になるだろ。

 そんなの。


 だからメールで訊こうと思ったんだよ。


 すると


「自分の代わりに病院代を払う人に、ホントのことは言いにくいと思うよ? 実質的な実害がないなら、ギリギリまで耐えると思う」


 龍子ちゃんはそういうことしそう。

 彼女はそう、付け加えて来た。


 ……そうかな?

 俺は別に、可能な限り高いバイト代のところで働けとは言ってない。


 多少のサポートで良いんだ。

 学業と両立できることを最優先で考えろって言ったから、耐える理由がない。

 だからもしセクハラがあったら、躊躇いなく辞めると思うんだが。

 彼氏君もいることだし。


 ……彼氏にしたら普通嫌だろ。

 自分の彼女が性加害されてるなんて。

 嫉妬と怒りで大暴れだよ。


 まともな男なら。


 アイツは兄持ちだから、そういう男性心理は分かるはずだし。

 それが分かってて彼氏君に無断でセクハラを受け続けるのも一種の裏切りだ。

 だから俺が聞いても、普通に本当のことを言うと思うんだけど……


 ……まあいいや。


「じゃあ、悪いけどお願い」


 携帯端末を近場のテーブルに無造作に放り出して。

 俺は茉莉が星間メールで俺の妹にメールを打つ姿を眺めた。


 ……今日の彼女は、上下の境が無い一体型の衣服……ツナギを着てたんだが。

 その後ろ姿に、ちょっとだけ女を感じた。

 ちなみに土色……カーキ色だ。


 一緒に居るのに慣れてはいるが、たまにはこういうことがある。


 ……うん。綺麗だよな。


 で、なんとなく見ていたら。


「げっ」


 ……ん?


 なんか、メールでの会話の感想では出そうにない声が聞こえた気がしたんだけど……


 すると。


 俺の携帯端末もブーンと震えた。

 メールっぽいな。


 なので確認すると……

 案の定、メールで。

 妹からだった。


 その内容は


『お兄ちゃん、さっき茉莉さんにも紹介したんだけど、バイト先で頼れる友人が出来ました! いや、友人って言っていいのかな……? アメリカ人なんだけど』


 そんな文面ではじまっていて。

 続く言葉でこうあった。


『リンフィルト・ニクダルマって人! すっごい美人のお姉さん! ちょっと話している日本語変なんだけどね! 日本人の男の人と結婚することに昔から憧れていて、来日したんだって! すごいよね!』


 メールには画像が添付されていた。

 開くと、そこには……


 白と黒のアンミラ風ウエイトレス衣装に身を包んだ妹と。

 そこに並んで微笑んでいるスラリとした白人女性。


 ……当然、見覚えがある。


 何でるの……?

 流石に俺は、恐怖を感じた。

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