第72話 韓国料理屋にて
韓国料理店は簡素な造りで。
飾り気のあまりない客席。
こういうところが、韓国料理屋らしいな。
店員に案内され、2人で席に着く。
そこで注文をして。
サービスで速攻で出て来たチジミに2人で手をつけた。
「韓国料理って焼肉のイメージあるけどさ、違うんよな」
焼肉は妹に会いに行くときに良く食べに行くけどさ。
韓国料理屋かというと、それは違うわけで。
焼肉屋は焼肉以外は汁物くらいしか無いけど。
韓国料理屋に行くと、もっと色々食えるのよ。
俺の言葉を聞くと茉莉は
「まあ、一般的な焼肉は日本式らしいから。誤解してる人多いみたいだけどさ」
そんなことを言ってきた。
「……そーなの?」
「本来は豚肉で、肉に下味ついてるらしいのよ」
ふーん。
俺はチジミを食べながら話を聞く。
美味い。
お好み焼きと違うんよな。
見た目似てるけどさ。
チジミを食べながら、焼肉の話。
「日本に焼肉が入って来たときに日本人が作ったってわけか?」
「んーと、まあそうなんだけどさ……」
どうなんだろうね?
当時はその人たち、日本人じゃ無かったわけだし。
向かいの席で同じようにチジミを食べている茉莉の言葉に、俺は正直困惑した。
……え? どういう意味?
「当時は在日韓国人って人たちが居たわけよ。今はもう、完全に同化して居なくなってるけど」
あー。
なるほどね。
数百年前の国民事情な。
当時の日本に住むことを決めた韓国人が考え出したわけね。
祖国の料理を日本で改変してみたのか。
まぁ、正直ありがたい。
それが無ければ、妹の住んでる街は食べ物屋が無くなる。
ケンタとマックしか行けなくなっていた。
「この辺のこと、知らない人間多くてさ。指摘するとムキになって反論してくる人多いから、あまりしたくない話ではあるのよね」
あー、そうなんだ。
焼肉のルーツの話を中途半端に
「日本で考え出された」
って聞いて、当時の日本人が考えたって思ったってことかね?
で、厳密にいえば違うから、訂正するとムキになるのか。
……意味わかんねぇな。
何が何でも全部日本で無いと嫌なんかい。
結局もう日本に取り込まれて消えちゃった人たちだから、俺らの一部だろ。
超古代の渡来人とかいう人たちと一緒。
もはやもう、数百年で同化が進んで誰が誰だか分かんないのに。
拘る意味がマジで分からん。
そんなことを
すると……
この店に、子供を連れた男女の客が入店して来たんだ。
「お」
「あ」
……俺たち2人は驚いていた。
子供を連れているということは、この男女は夫婦で、かつA級国民だってことだ。
A級国民はエリートって聞いてたから、勝手にスゴイのを想像していたんだが……
……見た目、普通なんよな。
みすぼらしくは無いよ?
それなりに着飾ってる。
でもフツー。
上流階級には見えない。
見た目も酷く不細工では無かったけど……
特別綺麗でも無かった。
女性の方はツリ目気味で癖毛だったし。
男の方は眼鏡で地味の一言だったし。
……この国のエリートには見えん。
まあ、A級国民に財力の項目無かったからそれで当然なんだけどさ。
ということは……
社会システムは、平等に適用されてるんだな。
依怙贔屓は無いんだ。
この宇宙真理国では。
……こう言ってはなんだけど。
見てて、なんか面白かった。
どうやって測定してるんかね?
人格指数ってやつ。
興味あるわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます