第35話 翌日の会社で

 次の日、普通に仕事なので出社した。

 帰りは電車。


 電車は乗り心地は悪いけどさ……


 24時間常に動いてるからな。

 かなりの過密ダイヤで。

 エネルギー代が安く、無人で運行しているからこそ成り立つシステム。


 そんなワケなので、まだ暗いうちから乗れば、田舎町から東京の会社に直接出社も出来なくはない。


 俺は出社して相棒に


「昨日はありがとうな」


 そう、まず礼を言う。


 昨日は相棒は焼肉終わった後に、先に車で帰ったんだ。

 自動運転だから寝てる間に家に着くから、多分労力はそんなに無いんだけどさ。


 妹のために足を運んでくれたんだから礼は言わんと。 


 すると彼女は


「ん」


 そう作業しながら返事。

 まあ、仕事中に長々と会話するのは無いし。

 そんなもんだよな。


 で、俺の仕事のひとつであるトレーニングをしに、訓練室に向かおうとしたら


「妹さんとチャットアドレスの交換したよ」


 言葉が飛んでくる。


 ああ、龍子と文字チャット。

 発言前に考えることができるから、人間関係のとっかかりとしてはまあ、あるあるなのだけど。


 正直、妹には相談に乗ってくれる立場が上の女性って居ないし。

 相棒のこういう対応、嬉しいわけだ。


 だから


「ありがとう」


 これ一択かな。


「私も若い子と話できて嬉しいのもあるから」


 ノーパソで何か文書を作りながら、相棒はそう応えてくれた。




 で、昼休みが済んだ後に上司の相沢さんに呼び出される。

 流れ的にまた仕事だ。


 課長の部屋に行くと、資料を渡されて


「政府からの依頼だからよろしくお願いね」


 そう言われた。

 マジか……


 相沢さんは説明をしてくれる。


「先月日本の領星になったN-444は知ってるかしら。大気の無い惑星の」


「ああ、あの新聞に出てた惑星っすね」


 渡された資料を読みながら返答する。


 確か、大気が無いのに生物がいた。

 我々は生命体の可能性を示す宝を内包した、素晴らしい惑星ホシを手に入れた。


 そういう記事が書かれて、社説でも大いに触れられていた。


「そこのバルーンビートル……資料に書いてるけど、N-444の生物ね。それを3頭捕獲して来て頂戴。生きたままで」


 相沢さんは眼鏡の位置を直しながらそう言って来る。

 3頭生け捕りか……


「数が多いですね」


「外国も欲しがってるしね。でも、当然ながら『自分で獲りに行ってくれ』なんて言えないわけよ」


 N-444が日本の領星になった以上、そこのものは岩石1つに至るまで全部日本の財産だから。


 ……そりゃまあ、そうだよね。


「ちなみにどこの国ですか?」


 相棒が資料を読み込みつつ質問。

 まぁ、気にはなるね。


 仕事には関係ないけど、モチベーションのひとつになるというか。


 するとまあ、帰って来た返答は


「アメリカと中国ね」


 ……だよねー。

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