4章:宇宙の密猟者

第31話 相棒と一緒に

『大国は発展途上国に保有惑星を分け与えるべきだと思うんですよね。そうでないと国家間の国力格差が無くならない』


 そんなことをテレビの中で言ってる論客。


 コイツなに言ってんだ。


 国が惑星を手に入れるのには人や金を掛けている。

 だからそのコストに見合うだけの利益を出さないとイカンだろ。


 タダで手に入れたものとでも思ってるのか。


 それを「今の時代、先進国だけ地球を大量に保有している状況になり、その結果国家間の国力差がえぐいことになってるから、分け与えるべき」だぁ?


 あり得るかボケ。


 チャンネルを変えたくなったが、このテレビの所有権は俺に無いからな。

 ……ここ、相棒の自家用車だしな。


 俺は今、相棒のバンで俺の妹が住んでる街に向かってる。


 自動運転で。


 相棒のバンは、車に大した興味がない独身者のバンって感じだ。


 運転席の後ろのスペースが広くなってて、狭めのリビングみたいな感じになってる。

 テレビがあって、冷蔵庫、ポットもある。


 で、相棒と一緒に座りながら。

 テレビを見つつ、ただ目的地に到着するのを待っている。

 不自由さは無い。


 煙草を吸えないくらいだな。


 さすがに他人の車で煙草は吸えない。


「なぁ、この番組面白いのか?」


 とりあえず俺は、それを聞く。

 やんわりと。


 すると


「いや、別に見て無いよ。ニュースよりはマシかなぁ、と思ったからこれにしたんだけど。何か他に見たい番組あるの?」


 インスタントコーヒーを飲みながら。


 見たい番組……


 この昼過ぎの時間帯、他も似たり寄ったりで


 競馬番組だとか、街ブラ番組。

 あとニュース。


 ……興味無いんだよな。


 しょうがない。

 我慢すっか。


「まぁ、いいや。ゴメン、俺もコーヒー貰って良いか?」


「どうぞ」


 俺は手を伸ばし、インスタントコーヒーの瓶からカップに粉を入れ、お湯で溶かして口に運んだ。

 まあ、コーヒーはブラックよな。


 相棒はミルク入れてるけど、俺はブラック。

 胃に悪いかもしれんけど、このくらい問題ないだろ。


「しかし、自家用車。すごく良いな」


「でしょ?」


 気分を変えるためにそう会話を切り出すと、相棒は嬉しそうにそう返してくる。

 俺は車に興味が無く、別に電車とバスで移動なんて事足りるだろと思ったから、車を持って無かったんだけど。


 相棒は旅行目的で自家用車を1台持ってて。

 今回、それを出してくれたんだ。


 自動運転、良いな。

 ……男は自動運転を使うな、って風潮あるから、正直選択肢に無かったんだよな。


 でも、電車で移動するよりはるかに楽だし。

 色々な意味で


 欲しいな。

 だから


「この車っていくらくらいするんだっけ?」


 訊く。

 すると


「400万くらい」


 即返答。なんでもない感じで。


 ……結構高いな。

 まあ、新車の値段だろうけど……


 中古だったらどのくらいだ?


 以前、先輩社員に「中古車5万で買わないか?」って言われたことあるけどさ。

 さすがに400万が5万にはならんよな……


「揺れないし、テレビ見れるし。……これは良いわ」


「そうそう。国内旅行をする際は、電車代要らないから最高なのよ。税金だけ払えば、燃料費なんて実質タダみたいなもんだしね」


 燃料……ガソリンな。

 ガソリンは水みたいなもんだしさ。


 生き物がいる惑星を複数保有していたら、そこから事実上無尽蔵に石油を採掘できるしね。

 なのでアホみたいに安い。


 昔は石油を巡って殺し合いが起きてたらしいけど、今じゃ考えられないわ。


「リューイチも買いなよ。車にお酒を持ち込んで、運転全部自動運転任せで、国内旅行するのは最高に楽しいよ」


 ニコニコと。

 確かに楽しそうだ。


「そうだなぁ……」


 俺の場合は、妹の学費と病院代の問題あるから、あまり高いのは買えないけど。

 中古で良いのがあるなら、考えても良いかもしれない。


 なんてことを考えていたら


『目的地にそろそろ到着いたします』


 車のAIが、そう自動音声で報告して来た。


 お……


「わりと街に見えるんだけど、ここ、そんなに酷いの?」


 窓からの景色を見た相棒の言葉に


「……食が死んでるのがな。地味に嫌ではある」


 正直な気持ちを口にする。


 なので今回も、会う場所は焼き肉屋になるんよな。

 そこくらいしかまともな飯屋が無いので。


 ……今日、相棒にこの街に来てもらったのは。

 妹に、大学卒業者としてのアドバイスをして貰うためだった。


 受験の話をしたら、買って出てくれたんだ。

 そこは本当にありがたい。

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