第25話 VS宇宙の鮑窃盗犯

 水中ではレイガンは使えない。

 理由は水があるからだ。

 水は空気ほど無障害でビームが飛ばないんだそうだ。

 色々混じってるせいで。


 それがなくてもレイガンは銃部分がバッテリーに有線で繋がってる武器。

 だから、その意味でも水中では使えない。


 厳密には、水に不純物が少ない場合はビーム兵器は使えるらしいんだけど、使えない状況の方が多いから、誰も無理に水中仕様のレイガンを作らないんだってさ。

 ソースは相棒。だから多分正しいはずだ。


 実銃もまあ、無理。

 こっちは当たり前。

 水の抵抗で弾が飛ばない。

 


 じゃあ何が使えるのかと言うと……


 男たちの1人が、昔ながらの水中銃を構える。

 ライフルみたいな、銛を撃つやつだ。


 本来はタコやイカを獲るためのやつだね。

 軍用の水中銃っていうのはあるにはあるんだけど、あれは一般には出回らない。

 プロの工作員にしか手に出来ない代物だ。


 鮑の窃盗犯レベルのケチな盗人には、これが限界の装備だよ。


 で。


 圧縮空気で銛を撃ち出すバシュ、という音と一緒に、かなりのスピードで銛が襲って来る。

 俺は避けない。


 避けようと思えば避けられるけど、それだと相手がビビらないんだ。


 あえて胸で受ける。

 普通なら深刻な怪我を負う場所を。


 阿比須龍拳奥義・鉄身五身!


 刺さらず、跳ね返る銛。


 連中が動揺する。

 ……さあ、どうする?


 ちなみに爆弾も使えない。

 水中だったら自分もダメージを受けるからね。


 だったらもう……


 打つ手なし。


 こういう判断になるよな?

 だから俺は黙って窃盗犯たちに襲い掛かる。


 そしてマスクの酸素チューブを破壊していく。


 逃げる邪魔はしない。


 そんなことをしたら死ぬからね。


 ただ、俺は逃げる連中を追いかけていった。




「ぐはあ! 死ぬかと思った!」


「畜生!」


 陸に上がって。

 男たちはマスクを外してぜいぜい言っていた。


 窒息する前に陸に上がれたか。

 おめでとう。


 まあ、そうなってもらわないと困るんだけど。


 ……見た感じ、全員いい歳した中年以上のオッサンどもだった。

 いい歳こいて、他人が必死で育てた成果物を盗もうとしてるんじゃねえよ。


 真面目に稼げ。


「……さて、銀河警察に突き出してやるから大人しく縛につけ」


 俺は左手義手を握り込み、生身の右腕を引っ提げて、彼らに近づいていく。


 すると彼らは


「冗談じゃねえ! 臭い飯なんて食ってたまるか!」


 陸に上がったからか。

 ちゃんと準備はしてたらしい。


 拳銃を構えて来た。


 潜水スーツに仕掛けがあり、実弾を発射できる実銃を携帯できるようになっていたらしい。

 陸に上がったら即銃撃戦ができるように、そういう準備はしてたってことか。


 で、発砲。


 俺は当然避けない。


 目も押さえない。


 ……正真正銘、鉄身五身が発動している俺には銃火器は通じないんだよ。


 そのまま踏み込み、間合いを詰め、銃を構えている男の1人の顔を作り物の左手で掴んだ。


 そして……


 エレキハンド!


 男の顔面から、150万ボルトの電圧で電撃を浴びせた


「アアアアーッ!」


 窃盗犯の1人は悲鳴をあげて、倒れ伏した。


 これで1人!


「ウオーッ! 吉田ァーッ!」


 だが他の奴らは逃げなかった。

 効かないのが分かってるハズなのに、拳銃を発砲して俺を攻撃してくる。


 ……こいつら、仲間意識は強いのか。


 そこは別に嫌悪感は無いけれど。


 だったら、思うよ。


 ……その仲間意識を、真っ当な仕事で活かしたらどうなんだよ。

 大事だぞ? そういうの。

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