第72話 慎重な追跡
黒い
その先頭を行くのは銀髪をやはり黒い
その若さと、このような時刻にこのような山道を登る彼女を見て、誰が王国軍の将軍だと思うだろうか。
そんなことを考えながら副官のシジマは上官のチェルシー将軍の後をついていく。
チェルシーが
この人員構成は全てチェルシーが選んだものだった。
シジマがチェルシーの副官としての彼女に好感を覚えていることがある。
それはチェルシーがココノエの民に対して差別的な気持ちを見せないことだった。
ココノエからやって来た白き髪の一族を不気味がる者や
老若男女皆、子供の頃から真っ白な頭髪の彼らを、西方の
ジャイルズ王の弟であるウェズリーなどは、明らかに
そのくせシジマの兄にしてココノエの総裁であるヤゲンをいいように使っている。
王国はココノエの民を受け入れ、ココノエの特異な技術の恩恵を受けているが、同時に王国民たちはココノエを恐れ、
そんな中、チェルシーは違った。
有能な者であれば人種に関係なく重用する。
彼女がこの部隊の自身とショーナ以外の20名をすべてココノエの民で固めたのは、任務の性質を考えてのことだった。
そんなチェルシーだからこそ、シジマは若干16歳の彼女に付き従うことに不満は
「まだ近付ける?」
「もう少し近付けますが、この辺りで休息にすべきかと」
チェルシーの問いにショーナはそう答えた。
現時点で王国最高の
だから今、彼女はわずかずつ
少しでも相手の力を感じ取れそうな気配がしたら、すぐさま自分の力を閉じて相手に気付かれることを避ける。
その方法で少しずつ相手との距離を詰めていた。
「おそらくですが、相手は移動を止めましたね。山中で一泊するのでしょう」
「そう。シジマ。夜が明けてからの攻撃に移るわよ」
そう指示を受けたシジマは進言する。
「恐れながら申し上げます。ご存知の通り、我らココノエの一族は夜目が利きます。夜襲にすべきです」
「夜目が利くといっても、あなたたちは暗順応に優れているだけで、
「それは……」
ココノエの一族は総じて視力に秀でており、
しかし昼間と同じように見えるわけではなく、常人よりは
「襲撃して敵を
きっぱりそう言うとチェルシーは兵たちを休ませるようにシジマに指示を出した。
「ここからは長い道のりになるわ。兵の
そう言うチェルシーにシジマは
☆☆☆☆☆☆
日が暮れ落ちた。
山小屋の前では
目的地であるビバルデに近付いているためか、プリシラやエミルの表情は明るく、特にプリシラは今まで以上に
「ビバルデに到着したらジャスティーナとジュードはどうするの?」
「そうだな。公国があんな感じだし、当面は共和国内を東に進もうと思う。出来れば東側諸国を目指すかな」
「もしよければ2人ともダニアの都に来ない?」
そう言うプリシラにジュードは少々
ジャスティーナは肩をすくめて首を横に振った。
「面倒だから
「そう。残念だわ」
プリシラは昨日、風呂でジャスティーナと話したことを思い返す。
ダニアの都にはジャスティーナの
だが彼女の口ぶりだと、
それ以上、無理
だが、それでもこの夜の食事は話が尽きることはなかった。
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