第61話 刃を持つ者の責任
(始まった……)
村長の館の前でプリシラは剣を抜き放つと、戦場となった村の中を見回す。
村に侵入してきた
村人は皆、きちんと訓練を受けており、剣と
仲間同士の連携も取れていて、数的不利な状況に
これならば簡単には負けないだろうとプリシラは思った。
エミルはジュードと共にプリシラの背後にある村長の家の地下倉庫に避難している。
ここは警護も固いため簡単には侵入されないだろう。
プリシラは剣の
今までとは違う。
降りかかる火の粉を払うのではなく、農民を守るために
プリシラは胸の内で母を想った。
(母様。力を貸して。私は母様みたいな戦士になりたい)
大きく息を吐くと、プリシラの耳に敵の近付く音が聞こえて来た。
「おい! 女だ! 女がいるぞ!」
そちらに目を向けると、
その目に宿るのは女を我が物にしようとする粗暴な欲求の光だった。
プリシラは拳を胸に当て、母の顔を思い浮かべながら一歩を踏み出した。
(アタシは剣を握っている。剣を握って、戦場に立つ者には責任がある。戦って敵を打ち倒す責任が。母様みたいに……戦うんだ!)
剣を握り締めたプリシラは襲い来る
「うぎゃあっ!」
だが刃は首を
斬られた
それほどの鋭い斬撃をまさか小娘が繰り出すとは思わなかったのだろう。
「な、何だこの女……」
プリシラは
そして自身の胸に
「げえっ!」
「ぐわっ!」
数人の
プリシラは
今、自分の胸を支配しているのは殺すことへの恐怖だった。
(どうして……アタシは)
頭では分かっている。
敵を殺さなければ守るべき人たちを守れない。
だが相手の首を
恐れているのだ。
人間の命を奪うことを。
「くっ!」
プリシラは倒れている敵に向けてトドメを刺すべく、剣の切っ先を向ける。
その時だった。
「弟の
村人の1人が、プリシラの目の前で倒れている
首を貫かれた
槍を突き刺した村人はプリシラを振り返る。
「ありがとうな。嬢ちゃん。こいつは……先日の襲撃で俺の弟を斬り殺した奴だったんだ。こいつだけは絶対にこの手で殺したいと思っていた。嬢ちゃんのおかげで
そう言う村人の目には涙が光り、それを見たプリシラは思わず胸が痛んだ。
(違う……アタシは殺し損ねただけ)
見るとプリシラが打ち倒した
「嬢ちゃんのおかげで楽に殺せたぜ!」
「すげえな嬢ちゃん。本当に強いんだな!」
村人らは口々にプリシラを称賛する声を上げる。
この村を訪れたばかりの数時間前、村人らに姉弟を紹介する際、プリシラにはジャスティーナが武術訓練をつけたことにしておいた。
ダニアの女王の娘だという話は伏せておいたのだ。
口々に自分を
(違う……これじゃあジャスティーナにトドメを刺してもらった時と何も変わらない)
プリシラがそう思ったその時、弟の
その手にはギラリと光る
「危ない!」
プリシラは叫びながら
村人を押し
その剣の切っ先は、村人の背後から襲いかかって来た
「ぐげっ……」
目を見開いたままの
その無残な死に様からプリシラは目が離せなかった。
(アタシが……殺した。この手で……殺した)
プリシラは立ち尽くしたまま、自分の心臓の
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