第27話 林の中の戦い
ジャスティーナは敵が正面から
鋼鉄の円盾はよく磨かれた表面が隆起していて、その流線に沿って
その
鋭い踏み込みから突き出される一撃を
「ぐえっ……」
口から血を吐き
ジャスティーナはすぐに短剣を引き抜いて血振るいをしながら
そんなジャスティーナの左右から2人の
そしてそのまま後方に飛び
敵はそんなジャスティーナに向けて槍を突き出すが、乱立する木々が
彼女の
(地形を……うまく利用している)
ジャスティーナは圧倒的な数的不利の状況にあって精力的に動き回っている。
乱立する木々をうまく
それを見たプリシラは身の内に
闘争を前にして、ダニアの女の本能がプリシラの体の中で強く脈打っている。
「今のうちに小娘と小僧を取り押さえろ」
団長の声が鳴り響き、
手に刃物を持つ者の他に、大きな
あれに
プリシラは周囲にすばやく目を向け、それから頭上を見上げた。
そして短剣を腰帯の
「エミル! アタシの背に!」
「えっ? 姉様?」
「早くしなさい!」
そう言うとプリシラはエミルを
「強く
戸惑うエミルは目を白黒させながら、それでも必死に姉にしがみついた。
するとプリシラは周辺で最も高い木を選んで、そのままスルスルと近くの木に登っていく。
弟であるエミルを背負ったままでもまったくそれを苦にすることもなく、プリシラはあっという間に10メートルほどの木を上の方まで登ると太い枝の上に陣取った。
「エミル。この木にしっかりと
「ね、姉様?」
「早くして」
姉から強い口調でそう言われたエミルは、ブルブルと震えながらプリシラから手を放し、その手で木の幹に必死にしがみついた。
それを見るとプリシラは優しく微笑んだ。
「昔よくこうして木登りしたわね。エミル。怖いだろうけど、ここでしっかりと幹に
「姉様は? 姉様はどうするの?」
「アタシは悪い奴らをぶっ飛ばす」
「あんなにいっぱいいるのに無理だよ!」
「アタシはブリジットの娘よ。あんな奴らに負けるもんですか。アタシを信じなさい。エミル」
そう言うとプリシラは平然とした顔で木の枝から宙に身を投げた。
エミルは悲痛な声を上げてそんな姉の背中を見送るのだった。
「姉様ぁ!」
☆☆☆☆☆☆
ジャスティーナは敵と戦いながらもプリシラたちの様子に目を配っていた。
ここに来るまでにプリシラの走り方を見てすぐに分かった。
彼女の身体能力がかなり高く、体のバランスも相当に優れていることを。
上半身のみならず下半身の筋力が相当に
おそらく彼女が本気で走って逃げたら、ジャスティーナでもとても追いつけないだろう。
だからこそ逃げることに注力すべきだと思ったのだ。
だが弟のエミルは
ジャスティーナは現状を
(敵を確実に
すでに敵を3人
このまま最後まで敵を倒し切れるとは思えなかった。
相手は徐々にジャスティーナを取り囲みつつある。
そしてプリシラたちもほどなくして取り囲まれてしまうだろう。
(多少無茶をしてでも
そう思ったその時だった。
ジャスティーナは敵と戦いながら視線の先にプリシラとエミルの姿を
その視線の先ではプリシラがエミルを背負って木に登っていくところだった。
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