第17話 赤毛の女
プリシラは
ただ体が動かないのだ。
こんなに悔しいことはない。
そんな彼女の肩に男の手がかけられた。
用心棒の男はいやらしい表情を浮かべ、興奮気味の様子で言った。
「さぁ。服を脱ごうか」
吐き気がした。
プリシラは嫌悪感と怒りで肩にかけられた手を振り払おうとするが、体にまったく力が入らない。
周囲を取り囲む男たちの向こう側では、
エミルは必死にプリシラに呼びかけている。
プリシラは悔しさに
(こんな奴らに……エミルの目の前で……悔しい)
そしてそんな自分を見て弟がひどく心に傷を負うだろうことを考えるともっと辛い。
そんな彼女の内心を
その時だった。
「邪魔するよ!」
野太い女の声とともに天幕の戸布が突然引き裂かれ、何者かが中に入ってきたのだ。
男たちは突然のことに
その瞬間、用心棒のうち1人の男が
予期せぬ突然の事態に団長は
「な、何だてめえ!」
刃物が
プリシラは
男を突き殺したのは穂先に血のついた短槍だ。
そしてその短槍を握っていたのは赤毛に
プリシラとエミルにとっては幼い頃から
現れたのはダニアの女だった。
見知った顔ではないが、仲間が助けに来てくれたのだと思い、姉弟は九死に一生を得た気持ちになった。
そのダニアの女は縛られているプリシラとエミルをチラリと見やると、男たちに言う。
「
女のその言葉に団長は
「ふ、ふざけるな! こんな上玉むざむざ逃がしてたまるか! オマエら! その邪魔な女を殺せ!」
団長の怒声に、残った用心棒の男2人は腰帯から短剣を抜いて、赤毛の女に襲いかかった。
だが、女は冷徹な表情を一切
「私は言ったぞ。2人を放せと」
その動きにプリシラは目を奪われる。
女の動きには一切の
「ぐえっ……」
「ごわっ……」
女が突き出した槍の穂先が1人目の
男2人はほとんど何も出来ないままその場に
人間の命をもっとも的確に奪うために洗練された動きであり、そこに
「
赤毛の女は冷たい声でそう言う。
プリシラは短槍で敵を
(ベ、ベラさんみたいだ……)
母の古い友である熟練の槍使いの戦士を思い出させるような、そんな
プリシラは女の顔をマジマジと見つめる。
年齢はおそらく30歳くらいだろうか。
これほどの使い手ならばダニアで開催される武術大会で見かけているはずなのだが、プリシラは彼女の顔に見覚えがなかった。
(こんな人いたかな?)
女は槍の穂先についた血を軽く振るい落とすと、それを団長に向けた。
「お嬢ちゃんの
「ひっ……ひぃぃぃぃ!」
女の目に宿る揺るぎない殺意に
それを
2人が無事なのを確認すると油断なく天幕の中を見回し、それから引き裂いた戸布の外に顔を出す。
そして周囲の様子を
「こっちだ」
すると赤毛の女に続いて天幕の中にもう1人の人物が入ってきた。
それは黒髮の若い男だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます