アリシアとひかり
@waterwaterwat
アリシアのひかり
薄汚れたくらい部屋、通気口の窓も手の届かないその部屋に1人の少女が自分の服と言えるかも怪しいボロ布を契り1人の人形を作った。
その人形に少女は自分の夢を込めた。
少女の名はアリシア、かつては燃えるような真っ赤な赤毛に、翡翠の色をした双眸、小麦色の肌にやんちゃらしさを感じさせるそばかすを携えていた。
今は長年による監禁生活により髪の色はくすみ、肌は病人のように青白く、眼はくすんでいる。
10歳の頃に攫われてからもう5年がたつ。
今だに助けは来ない、あんなに可愛がってくれた両親はもう死んでしまったのだろうか。
発端は8歳の頃、突如物に命を吹き込めるようになった。
それに気づいた両親達は最初はおどろいたものの徐々に受け入れ、また閉鎖的な山間の村落にすむ村人にバレるとよくないと思い、きつくアリシアに能力は使わないように説明してきた。
そんな折、両親が村の仕事で居なくなる事があり1人で留守番していたのだかどうしても寂しくなり両親を探しに出かけた。
そこまではまだよかったのだか森で迷子になったアリシアはこれまた不安で寂しくなり草や葉に能力を使い命ある人形を作ってしまった。
そして、そこをたまたま通りかかった野盗達に見つかりその能力を利用するために監禁されてしまった。
野盗達に怯えながら人形などの命無き物に命を吹き込むアリシア、しかしその能力には特徴があった。
それはアリシアの大切にしている思い出を物に込めないと命は宿らず、またその命が宿った子供達をアリシアが与えた思い出と同じくらい幸せな気持ちにするまで遊んであげないと思い出や記憶は帰ってこないのだ。
そして野盗から与えられた人形達に命を込めるとすぐにそれは商品として売りに出されるため、人形と遊べる時間もあるはずがなく、アリシアに記憶が返ってくることはなかった。
こうして野党とらわれてお金儲けのために能力を酷使させられ、その度に大切な思い出を失ってきたアリシアにはもう大好きだった両親がどんな人だったたのかも思い出せない。
そして心の支えである両親たちとの素敵な記憶も全てなくなった時、アリシアの精神はもう限界に達していた。
それでもアリシアが今まで生きてこられたのは、夢を諦めずに持ち続けていたからだった。
「もう…疲れちゃった」
そしてアリシアはボロ布に自分の夢を全て込めた。
「あなただけでも幸せになって…こんなに小さいしペラペラなんだもん、この檻から抜け出せる。」
-パァァァァ
そこにはぼろ布で出来た人形が薄いぺらぺらの身体を二本の足で支えて立っていた。
「さぁ、アリシア!こっから脱出するわよ!」
-口がないのにしゃべってる
普段から人と話すことのないアリシアは1人頭の中で驚いていた。
それでもすぐ無気力な目で見返してこういった。
「無理だわ、こんな檻から出られっこない。
今まで何回も、いろんな方法を考えて逃げようとしたわ。でもこの檻からは出られないの。」
「私になら出来るわ!アリシアが本気で私が出来ると思ってくれたことはなんだってね!」
そして人形は檻の鉄格子の前に立っていう、
「さあ!アリシア!私は今からこの鉄格子をあなたが通れるサイズになるまで開くわ!私は本気よ!」
「ふんぬ!ふぬぬぬぬぬぬ!」
「はぁはぁはぁ…ちょっと全然ダメなんですけど!アリシア信じてないでしょ!」
「信じれるわけないでしょ!こんなぼろ布にそんなこと出来るわけないじゃない!」
「でもアリシアは物に命を吹き込めるのよ、それは小さい頃アリシアが本当にそう思っていたからじゃない?」
「………、そうだとして、もし本当に出来るとしても、もう怖いの、夢や希望をもって駄目だったら考えるとそんなこと想像出来ないの…」
「やってもないのに決めつけるなぁぁぁあ‼︎」
-ハフンッ
ぼろ布のチョップが炸裂した。
「アリシアならできる!大丈夫!自分を信じなさい!」
どこか懐かしさを感じる言葉遣いにアリシアはどうせこのまま死ぬならとこころを決めた
「よし!いい目になったじゃない!じゃあ行くわよ!
そーれ!」
-ギ、ギギギギッ、ギー
「ほらね!あいたでしょ!私がいった通りにね!」
「よし次はささっとこんなとこ抜け出して、アリシアが生み出した子供達を探し出して思い出を取り戻しにいくわよー!!
そんでもってアリシアの両親を見つける!」
畳み掛けるような出来事とぼろ布の言葉にアリシアは呆然としていたが頬に伝う涙を拭うと。
「私に出来るかわからないけど…」
-キッ!
目がないはずのぼろ布な睨まれた気がしたアリシアは続けてこう言う
「でもがんばるわ、私の夢を叶えるために!」
「そうよ!それでこそアリシアだわ!さあ、いっくわよー!」
そして牢をでていくアリシアとぼろ布。
かくして2人はアリシアの思い出を取り戻すため、アリシアの夢を叶えるため、冒険にくりだすのであった。
アリシアとひかり @waterwaterwat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます