第24話 負の連鎖!

 ……というわけで、今までお世話になりました。」


 正直、開いた口が塞がらない。まぁ、本人が納得してるなら良いけど……ケンさんにはお世話になったし強く言えない。

「そう……か。なら仕方ないな。

 俺と太郎を支えてくれてありがとう。」

 将軍が元の口調で頭を下げる。

 私もそれにならい頭を下げる。

「っ!………任されていた仕事は全て引き継ぎを終えています。後で、確認してください。

 それでは、失礼します。」

 賢さんと敬一は涙を流していた。

 あぁ、俺も泣きそ……










 とまぁ、色々あって戦士が脱退した。それにともない九将になったからよろしく。」

 ピ!と音をたてて他の幹部達への連絡を終えた。

「いや、軍師様!そんな淡白でいいんですか!?」

 隣でAQが叫ぶ。連絡するためにモニタールームの設備を借りに来ただけなんだけどなぁ。

「…だって……もう三回目だし、会議を開くほどではないかと判断したのだよ。」

「だったら、前回の騎士様の時、私が会議に出る必要なかったじゃないですか!」

「それは結果論だよ。あの時は必要だと思ったんだ。」

「う…ぐぐ……何も言えない………」

「それじゃ、残りの仕事も頑張って。」

「……はぁい……」




 モニタールームを出て少し歩くと、電話のコールが鳴る。

 誰だろうか?

「もしもし。」

『あ、もしもし軍師様?』

「Bか、どうしたんだ?」

『実は…この前のボディーガードの時に魔法少女カザリ様に会えたじゃないですか?』

「え?…あぁ……えっ?カザリ様?」

『どうしました?』

「……いや、続けて?」

『それで、カザリ様に"私のサポーターになる気はない?"と言われてしまって。』

「ほぉ、なら潜入するというわけだな?」

『あ、いえ。辞めます。』

「……?」

『ニューワールドを辞めます。』

「は?……え?ちょ……え?……何で?」

『いやぁ、ニューワールドに不満は無いんですけど、憧れの人に隠し事は嫌かなって。』

「………へぇ、魔法少女が好きなの?」

『いえ、私は魔法少女カザリ様が好きなのです!初めての事でありながらも、めげずにひた向きに立ち上がる姿を見て、強く憧れたことを覚えています!』

 おぉ………

「同い年だよね?」

『はい!だからその時から筋トレを始めました。そしてその結果が今です!』

 電話越しでも分かるドヤり方だなぁ。

「それはすごいな。まあ、熱意は分かったよ。」

『……ですが、迷ってるんです。』

 おっと?………

「なら潜入でも……」

『いえ、そうではなく。カザリ様にはナギサ様という何よりも完璧なパートナーがいるのです!そこに男がいて良いのかと!』

 あぁ、えっと…百合に挟まる男…だっけ?

「なら、保留にして良いんじゃないか?」

『いえ、なので私を女性にする発明を…』

「調子乗んな!バカ!」

『う……』

「ハァー、これはあれだな。食堂に集合な?」

『あ、いや!それは!』

「め·い·れ·い·だ!」

 プ!私は電話を切り、溜め息を吐きながら指定した場所に向かう。

 先程の通話記録はとっておいたので使うことになるだろう。





「というわけで、三者面談を始めます。」

 私とBと板前の三人以外、誰もいない食堂で私を対面にBと板前が座る。

「この度は、うちのバカ息子が無茶を言ってすみませんでした!」

 板前が手でBの頭を掴みながら一緒に頭を下げる。

「ちょ、お母さん!それぐらい自分でも出来るから!」

 Bが、少し顔を赤くしながら頭に置かれた手を振り払う。

「このバカ!なんだい、今の通話は!辞めるまでならまだしもそのがめつさ!いったい誰に似たんだか…」

 親子会話がどんどん進んでいき、私が置いていかれていく。

「あのぉー続きを話しても?」

「あ、すみません!本当にもぉー。」

 ふふ、さすがのBもこれは堪えるか。

「とりあえず、息子さんの選択をこちらとしては尊重します。」

 小声でありがとうございますと呟く板前。

 将軍にも伝えたけど、ありゃ駄目だ。賢さんの事で頭が真っ白になってた。

「こちらが気にしているのは、板前…赤木稲子さんが息子さんについて行くかどうかです。」

「……成る程。

 それについては大丈夫です。ここは楽しいですし、給料も良い。このバカももういい大人ですし、一人でも大丈夫だと………信じたいです。」

 最後に自信が失くなったのは…まぁ、分からんくはない。

「分かりました。B、あなたもそれで良いですか?」

「えあ!?…はい!」

「こら!仮にも裏切るんだから申し訳なさそうにしなさい!」

「が!?」

 板前がBの頭をひっぱたく。

「ふふ、心配せずともこちらは気にしません。ですが条件があります。」

「……何でしょうか?」

 私の発言に妙な緊張をはらむ二人。

「そんな真剣なことではないです。向こう側に行った元秘書、元騎士、元戦士と接触して魔法少女側にどれだけの情報が渡っているか把握しておいてください。変に喋られても困りますからね。」

「……それを、軍師様に伝えればいいんですか?」

「いや、それはいい。逆に察知されてしまうかもしれないからそれはしなくて。」

「分かりました。これからも軍師様のことは心の中で応援しています!」

「本当にご迷惑をおかけしました。それでは。」

「えぇ、お二人ともお気を付けて。」


 二人が和やかに帰っていった。

 あぁーー!疲れたぁ………………

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