第14話 人事部なんだが!?

 おぉ…やっぱすげぇ。力の解放で足も速くなってるな。これで身長も……は夢見すぎか。


 魔法少女二人の場所は……………………


「なるほどな。」

 何であの二人が呼ばれたのか、検討はついていたがやっぱりな。




「火事だぁー!」

「消防署に連絡は!?」

「もう呼んだよ!」

 辺りには怒号に等しい声がけたたましく鳴り響く。

 ………最近の人は、当事者以外の野次馬はスマホを片手に撮影か。温度差で風邪を引きそうだ。

 火元はマンションの六階、魔法少女のアラームが鳴ってから、私が走って十五分。かなり燃え広がっているし、窓から逃げ遅れた人の影も見て取れる。

 見たところ魔法少女はいないが、人に見られないように良い場所を探しているのだろう。





「「彼方に願いを!」」

 来たか。

 上空から少女の声と白い光が地上に降り注ぐ。



「皆さん!安心してください!私達が火を消火します!危ないので離れてください!」

 魔法少女サクラが注意喚起のために大声を上げる。彼女の声はよく通り、その声に従うもの、従いつつも撮影を辞められないもの、それぞれだ。


 ………そろそろ来るかな?

 私はこそこそと人だかりから離れる。


「うわぁ!?」

「冷た!?」


 突然人だかりに水がかかる。


「何するんだ!!」

「あ、ごめんなさーい!もっと離れてくださーい!」

 魔法少女サクラが大声で謝る。

 もちろん今のはわざとじゃない。魔法少女ラナが、わざとやったことだが。

 モニタールームからの情報で、こそこそ盗撮をして自身に被害が出たら八つ当たりをする等、それに準ずる行為をする人を魔法少女ラナは嫌っているらしい。だから、魔法少女サクラの操る水に魔法少女ラナは自分の操る水を混ぜて調整して周りに飛ばしているらしい。

 何故、魔法少女ラナ本人がやらないかと聞かれると、私の憶測になるのだが、魔法少女サクラの笑顔とひたむきな行動に尻込みし、文句を言う人が減るのではないかと。もし文句を言われても魔法少女サクラはごめんなさい!と瞬時に謝ることで怒りを抑えてるのではと思う。なんか前に見た魔法少女人気ランキングなるものでも魔法少女サクラは上位だった。

 それに、自分が操る水に他人の水が混じれば分かる筈だが、それを言わずに謝るということはそういう役割なのだろう。



 魔法少女サクラがおおよその鎮火を終わらせると、魔法少女ラナが救出に向かう。ここからでも見えるが、彼女は一人一人に声をかけ安心させるように救出している。


 彼女の素が、下を向いてモジモジしていて、友達に促されないと、話せないとは誰も思わないだろう。

 魔法少女は意外と身バレはしていない。している人もいるが、それは自ら公言していたり、表で輝く仕事を持つ人達だ。上手く国が情報操作をしていると思う。





「ありがとうございます!」

「お姉ちゃん、ありがとー!」


 魔法少女ラナと魔法少女サクラに救出された人達が感謝をする声が聞こえてくると、段々と周りにいた人達にも波及するようにその感情が広がる。それにより、水がかかり先程までぶつくさ言っていた人達も、気まずそうにこの場を離れていった。


 しばらくして消防車が現場についた。魔法少女の二人に頭を下げた後、現場の確認のために行動をはじめた。

 魔法少女二人は一息つくようにハイタッチをするとピリリ!ピリリ!と、また音が鳴る。

 魔法少女二人は人だかりに手を振りながらどこかへと向かう。



 あの二人にまた呼び出し?またもや火事が?


「モニター、魔法少女サクラと魔法少女ラナの動向の把握は?」

『こちらCM。今から把握に……え?あぁ了解。』

 どうしたんだ?

『軍師様!私です!AQです!』

「おぉ、どうした?」

『今、Dさんから連絡がありました。例の試作品が暴走して街に出たとのことです!現在その試作品が魔法少女に見つかり、警戒されています。』

「!中に誰か!?」

『いえ、スーツとベルトだけで、人は装着していませんでした。』

 つまり…スーツがベルトの暴走で動いてるのか。

「そうか。なら魔法少女に壊してもらえばいいか。」

『いえ、Dさんから戦闘データを取って欲しいと。』

「…………了解。」








 あれが暴走した試作品、人型0041─Kくん。これは戦闘員Kに試作品の動作のモデルを任せていた為、全ての人型にKの名前がある。何故Kかと言うと戦闘員Kの身体が柔らかいから選ばれたのと、CONNECTの意味を冠している。

 見た目は機械チックで黒とメタリックシルバーの身体、顔にはガスマスクのようなものを着けており、両腕には銃身のようなものが、足から背中にかけて刃のようなものが生えている。



 対峙するのは魔法少女チエ、魔法少女ユリ、魔法少女コメリ、魔法少女ユノ、そして魔法少女サクラ、魔法少女ラナの計六名。………多すぎでは?過剰だって。

 ……まぁ、見たこともない敵に対して万全の状態で戦うのは悪いことではない。


 まずは小手調べとばかりに魔法しょ……サクラとラナが水流をまとめて人型0041─Kくん……シーケーくんにぶつける。

 敵に気付いたシーケーくんが水を払い除けるように銃身から弾丸を飛ばす。……えーと、時速は186か。Dからデータで送られたこのアプリ便利だな。

 その弾丸をユノが防壁を展開し防ぐ。

 シーケーくんは防がれると察知していたのか、助走をつけて、足に生えた刃で切りつけるように高速回転をする。

 ユノがそれを辛うじて防ぐと、そのユノの後ろからコメリが操る風に乗って、自分の得物を持ったチエとユリが飛び掛かり、シーケーくんに武器による振り下ろしを当てた。

 すると、シーケーくんは崩れるように倒れると塵になって消えた。


 魔法少女達は深刻そうな顔をしているがそういうわけではないので安心してほしい。

 ………だがまぁ、時間が解決するだろう。

 私は一連の動画と私なりの意見を添えてDに送信する。そろそろ帰るかな。


『もしもし、あの…軍師様?』

「どうした?AQ。Dにはもうデータを送ったぞ?」

『それが……貴族様から言伝がありまして………』

「何?」

『た…卵とミルクを、買ってきて欲しいと………』

「…………あ?」

『ひい!?ごめんなさい!プツ………』

 切られた……………

 

「ハァー、行くかぁ。」

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