第10話 いつも叫んでると思うなよ!
「今日は我々ニューワールド日本支部の根幹に関わる作業の紹介をする。君達はある意味人類への反逆と分かった上で……ニューワールドと知った上で我々に協力すると言ってくれた者達よ、感謝する。」
今回は通常会社からニューワールド日本支部へと配属が変わった新人達の案内をすることになった。配属が変わったというのは特に能力が高く、優秀な人材達の中で我々がニューワールドだと告げた上で頭を縦に振った者達だ。
横に振ったら?記憶を消してそのままだよ。優秀な人材を失うわけにはいかないからね。
後ろの新人達は少しソワソワしながらついてくる。たまに小声で何をやらされるのかと不安がっているがそんな怖いことじゃない。
街の破壊?ノンノン
金の荒稼ぎ?ノンノン
そんな物騒なことをしていたら警察に捕まっちゃうよ。……まぁ、不動産で田舎の古い家を売ってくれたら都心の家を安くしますよ?みたいな感じで商売して、その田舎の土地を我々が利用しているのだが。更に言うと、こちらの建築業者に頼まれるのであれば顔見知りのため、お安く出来ますよ?と悪魔の誘惑を使い、我々に金が回るようにしているだけだけどね。
「この転移ポータルの先が我々ニューワールドの世界だ。皆、ここに乗ったら後戻りは出来ないと分かった上で来るんだよね?」
私の問いに新人五名が神妙な面持ちで頷く。
「分かった………AQ!転移頼むよ!」
「了解です!新人の皆さん、緊張しないで大丈夫ですよ?何事も柔軟に考えれば全て上手く行きます。」
やっぱり、才能はあるんだよねぇAQは。何でいつもこの態度が出来ないのかなぁ?
さてと……
「?……軍師様、何故マスクを着けたのですか?」
「それは…
おっと話の途中に転移してしまった。まぁ行けば分かるよ。
「おぉ!………おぉ?ここが、ニューワールドの世界?」
「ようこそ!RV、RW、RX、RY、RZ!」
「これは?」
「目の前には長閑な田舎しかありませんが?」
「?そうだよ?」
何を言ってるんだ?この子達は?
「すみません、勉強不足で。詳しく教えてくださいませんか?」
うぅむ、そういうの苦手なんだけど。
「見ての通りさ。五人とも不動産と建築業出身だよね?なら知ってると思うけど、田舎の土地を買い取ってるだろ?」
「はい、そこで科学兵器を作ってるとか、人体実験をしてるとか!」
それってネットの書き込みじゃん。
「残念だけど、そういうのはしてないんだ。
こっちに来て。」
「ここは?」
「これこそ、現在ニューワールドの大規模事業、日本植林計画だ。」
「「「「「は?」」」」」
なんだ?話が噛み合わないな。
「えっと…あの、人類への反逆とは?」
「あぁ、見るだけじゃ分からないか。ここは長野県にある地域なんだけど、そこで植林をしているということは?」
「えっと…ヒノキですか?」
流石、優秀だ!
「そう!僕みたいに花粉症の人には反感を買っちゃうからね。でも、今花粉症を防げるマスクを開発中だから気にせず植林していこう!」
「「「「「…………………………」」」」」
それで、わが社のマスクが売れれば更に利益がでるし、皆はこのやり方に衝撃を受けるのはしょうがない。……………………………………沈黙長くね?
「?……どうしたの皆?」
「あ、いえ。大丈夫です。意気込んだ割にはって感じで。」
「確かに、実態を知ると意外とってよくあるよね。」
分かるわぁ、俺も職業体験で幼稚園に行ったことがあるけど、見かけによらず体力を使ってキツかったなぁ。
「いや、そういうわけじゃ………何でもないです。」
「……私達は何をすれば良いのでしょう、」
「おっと失礼。
週休三日制で朝から夕、夕から朝のどちらかだ。夕から朝の方は体力に自信が無かったり、疲れるのが嫌ならそっちだ。でもその代わり給料も安くなるからよく考えてね。
あ、それともっと詳しく知りたければ、先輩に聞くか、ホームページを見てね。」
「え!?ホームページがあるんですか!?」
「もちろん!あった方が便利でしょ?
緑木農園って名前だから気になったら調べてね。」
大体の業務内容と最低限の話をすると、この場の責任者である戦闘員Aが手を振りながら走ってきた。
「軍師様!お久しぶりです!」
「やあ、久し振り。今日も上裸だね。」
「はい!たまには遊びに来てくださいよ!」
「無理、花粉症だもん。」
「あはは、そうですよね!
あ、その子達が新人ですか?」
「そう、後はよろしく。」
「了解しました!」
私は手を振りながら別れを告げたら、急いで転移ポータルに駆け込む。そこで、懐からポケットティッシュを取り出しながら、マスクを外す。
あぁ、真顔のままでいれたけど、マスクの中が鼻水でビショビショだぁ…うぅ…目薬も差さないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます