第9話 泣いてねぇから!

「スゥ……えぇ、第六十八回ニューワールド日本支部の会議を、始めます。今回は緊急のため急遽集まってもらってすまない。

 それでは戦闘員AQ、まず事の顛末を話してくれ。」

「は、はいぃ!!」


 AQの説明を聞いて幹部達がどんな表情をするかの確認をしておこう。今後の参考に……まぁ、ならなくてもいいか!

「こ…これはお、起きてしまった事実なのですが!騎士様が秘書様のようになられました!

 それで、詳細が…………


 最初から言うのか。まぁ、表情の動きがよく見れて有難い。表情は、


 従者。笑うな、クソジジイ。お前のせい。


 医者。夜勤で目が虚ろ。B、I、Jが意外と重症だったようだ。どっかの誰かが蹴り飛ばしたかららしい。


 平民。頭を抱える。絶対チョーカー案件。


 貴族。持っていた高そうなティーカップを表情を変えずに落とす。掃除するの私なんだけど……


 農家。爆睡。仕事お疲れ。


 戦士。メモ帳に書き込んでいる。真面目だぁ。


 有能。無。フード深く被りすぎてなんも分からん。まぁ、名前と能力以外、何も知らないんだけどね。


 JK。口をポカンと開ける。女の子がしていいのか?その顔。


 板前。目が点。ダイゴはよく食べるって話してたもんねぇ。


 将軍。見えないようにしてるけど、ちょっと涙目。


 十人十色、ってか。


 

 ……という、経緯です。」

「話してくれてありがとう、AQ。引き続…」


 なんだ? は・や・く・か・え・し・て?

 目と口の動きでAQが訴えかけてくる。

「……AQ、通常業務に戻ってもらって構わない。」

「はい!失礼しました!!」

 声のボリュームとは裏腹に会議室のドアをガラス製品を扱うかの如く優しく閉め、AQは退室した。



「では、よろしいでしょうか?」

「戦士ケン、どうぞ。」

「秘書に続いて騎士までも裏切った今、戦闘を得意分野とするものが従者一人となりました。

 前回は後釜は必要ないと申しましたが、今回は誰か一人昇格させるべきかと。」

 確かに、その話は頷ける。ニューワールドとしての戦闘行為やそれに準ずるものが起きた場合、従者一人では厳しいだろう。せめてもう一人は必要だ。

「私もその意見には賛成だ。他には何かあるか?」

 その時、JKが手を挙げた。

「珍しいな。JKナナ、意見を。」

「守りのために戦う人が必要なのは分かるけどさ、昇格させて幹部にするって、幹部候補の人達に将軍が与えていた力を完全に使えるようにするってことだよねぇ?」

「そうだな。」

「でもさー、それでまた"向こうに行っちゃう"人が出たらもっと不利になっちゃうじゃん?私達。」

「………まあ、そうだな。」

 え?今フラグ建てられた?

「だったらさー、今の幹部の戦闘面を引き出せないかなって。」

 ………どうなんだろう?それは将軍にしか分からないし。

 将軍の方をチラリと見るとダイゴの反動でまだ顔を下に向けていた。

 立ち直ってないなぁ………

 私は将軍の耳元で先程の話の流れを教える。

 

「フム………JKナナ。出来なくはない。」

「え!?マジ!?テキトー言ったんだけど!」

 会議でテキトー言うな!

「将軍、ならば私ももっと強くなれると?」

 おや、ケンさんが食いつくとは思わなかった。

「出来る。」

 出来るの?マジ!じゃあ……俺も?

「なら!お願い致します!私に戦う力を!」

「何故?」

 ………おっとトリップしてた!そう!何故?

「最近、同業の奴らが、我々の右肩上がりの業績に嫉妬して嫌がらせを…」

「よし、潰せ。」

「徹底的にだ。」

「して…え?将軍に軍師も?」

「当たり前だ。」

「舐められたら」

「「終わりだからな!」」


 その後、全員一致(数名強制)で幹部の戦闘面における能力の解放を行った。

 まぁ、出力的には四十%位の解放だね。私も能力が解放されたことで、米一袋だったのが米俵二つを持てるようになった。

 ……私は元があれだから、他はもっとすごいんだ!

 ……………………………………ハァ



 因みに、幹部の名称も十一将から十将へと変更された。なんかどんどん減ってるし、なんかまた…………

や、待て!待て!皆まで言わん!フラグになる!

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