第28話 READY TO GO!

__2050年 3月__


僕らは、今回の為にDAMIAが新たに作ったIDブレスと連動する「特殊通信装置」を使い連絡を取り合う事になった。この装置なら簡単には傍受されないらしい。それ位、手の込んだものを今回の為に用意してくれた。

政府も、既にそのような不正に作られた通信装置が最近では巷に多く出回っているというのを嗅ぎ付けている。その為に常にハッキングしようと動いているのだ。だからこそDAMIAが今日の為だけにかなり慎重に作ってくれた装置だ。本人曰く、過去一番の傑作らしい。


_____


DAMIAは戦う準備を隠れ家から操作出来るように細かくチェック。

政府ネットワークへ侵入する僕らを遠隔サポートする為に、とにかく念入りに準備を進めてくれている。そしてRayと私は、父さんの「聖地」内でもお互いが離れた場所で、それぞれのモニターをセット。屋上への出口にあたる壁のちょうど裏側と表側で僕らはスタンバイする事にした。外で戦うのは不思議な感覚だが、時折吹く風が僕らをリラックスさせてくれた。


壁に寄り掛かりながら、リラックスした姿勢で背中越しに二人で声を掛け合う。


(そろそろだ・・・とお互いが気持ちを整理する。)


空を見渡すと、ビルの屋上からは配送ドローンが少しだけ飛んでいるのが見えるが、

今の所、ビルの周りには政府ドローンの姿は見当たらない。この辺は政府にとってもノーマークなのかもしれないと少し安堵する。

流石父さんが選んだ場所だけあるな、と感心した二人だった。


(それじゃ準備は良いかな?)


___DAMIAからの声が僕らの耳に届く。


その言葉と共に、僕らは天を仰ぎ、その後目をゆっくりと閉じ深呼吸をする。

自分達の呼吸音だけが研ぎ澄まされた脳裏に感覚だけを伝えてくる。

今まさに、三人の集中力が頂点に達しようとしていた。

そして皆がしっかりと目を見開き、それぞれがスクリーンに向き合う。

手の動きを確かめるように握ったり閉じたりを繰り返す。

体の力を全身から抜き、指だけに全神経を注ぐ___。



「さあ、準備は出来たかな?Ray。」


「うん、SORAも出来た?いよいよだね。なんだか少し緊張する。」


「大丈夫だよ、信じよう。僕らだったらなんでも出来るって。最高のパートナーだから!」


「そうだね。なんてったって最高の!だからね!」


二人でもう一度大きく深呼吸をし、これからの戦いに向けて気持ちを平穏に保つ。

一度侵入すれば、そこからはノンストップで戦いは止められない。

Rayに至っては、顔を(パンパン)と叩いているのが壁を通して聞こえてくる。


自分の力に掛かっているんだ。いつも侵入していた時のように冷静に、と自分に暗示をかける。


__その時、ふと思いついた事を口にしてみた。


「Ray、(刑事とドロボーの追いかけっこゲーム)のような気分で楽しみながらやろうよ!常に笑顔で・・・。とにかくリラックスして遊び感覚でいこう!」


「いいね!それ!なんだか面白そうだし、恐怖心が丸っきりなくなる。」


と、Rayから返事が戻って来る。


DAMIAからは装置を通して笑っているような声が耳元に届いた。

____


やっとこの時が来た。兄貴が亡くなってからの期間、あっという間だった気がする。

全ては最高の友達、SORAとの出会いから始まった。

その出会いが僕に勇気をもたらし、そして自信に繋がっていった。

DAMIAにしろ・・・二人に出会えた事で今がある。

本当に二人がいつも僕をサポートしてくれた。

__二人には感謝しかない。

言葉で言うのはなんだか変だけど、今の僕は、常に前進あるのみ、当たって砕けろ?(あ、砕けちゃだめだ!)とりあえずポジティブ全開になっている。

そして何よりも僕らは最高のパートナーだって。

多分SORAが、気を使って言ってくれたんだろうけど・・・。

(刑事とドロボーの追いかけっこゲーム)のような気分でやろう、というSORAの言葉は僕を楽にしてくれた。怖がらず笑顔でやろうって。

だって未来は明るいんだから、怖がる必要は無いんだって。


____


さあ、今からだ。俺が動き始めてから随分と時間は掛かったけど、奴らに恐ろしい景色を見せてやる番がやっと来たのか・・・。

SORA、Rayそして・・・、俺も勝つ為の準備は十分してきた。

二人と一緒なら負けるイメージは吹き飛ぶね。

そして、これでやっと元の平和な日本になるんだと信じてる。

俺達が今迄に味わった恐怖というものをお前らにも見せてやろう。

いや、それ以上の事を。


__それにしても二人の会話が聞こえてくるけど、まるでピクニックに行ってるように明るいな。全く変な二人だ。こっちまで楽しくなるな・・・。

でも、本当に二人に出会えて良かった。

俺も全力でいくから一緒に最後の扉を開けよう。

俺も二人と同じく、「追いかけっこ」のゲームを楽しませてもらうよ。


_____


父さん、今から僕らは戦うよ。

皆と一緒にこの父さんの「聖地」で戦えるって凄い事だよね。

きっと、父さんも側にいるんだよね?どうか、力を貸してください。

一緒に、父さんの目指していた景色を、取り戻そうよ。


さあ、いくよ・・・。




3人それぞれの頭の中には、走馬灯のように色んな事が浮かび上がる。

そして、目指している世界の景色は今まで見た事のない最高のもの。

人間らしく生きれる時代をもう一度手に入れ自由になりたい。

これからは、政府のやりたいようにはさせない。


__そう、僕らはロボットではない。血の通った人間なんだ・・・。


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