第23話 trick

__2049年 12月__


12月だというのに暑さは変わらない。

昔の日本の「冬」を体験したくなる。


今、空には、配送ドローンと沢山の政府ドローンだけが飛び交っているだけ。

____何の趣もない。

たまに垣間見えるその隙間からの日差しが、道路にチカチカとした光を照らし、車のウインカーのようなシグナルを道の上に残していく。

ある意味これも、今の時代の木漏れ日なのかもしれない・・・。


__________


(そっちの様子はどうなの?ある程度はNCCBのネットワークの事情は把握出来た?)


(うん、ようやく分かったような気がする。あとは、その「時」を待つだけだね。)


(俺らのやっている事が・・・バレたらまずいから・・・絶対に。)


(大丈夫だよ・・・。バレる事はないし、俺の事を完全に信じているね、あいつらは。)


(そうか、それなら良かった。長い間やってきた計画が・・・、目の前まで実現出来そうなところまで来ているから。いや、実現させないとね。随分と長く掛かったけど・・・。)


(うん、本当に長かったけど、これだけ信頼を得られたらもう不安はない・・・。そっちはどんな状況?)


(ああ、俺の前に・・・、凄い奴が現れてくれた。やっと見つけたよ。俺達の救世主を。彼ならやれるっていう自信がある。だから俺らの夢の実現は目の前だと確信した。俺が出来る準備もほぼ整ったし。後は、その「時」が来るのを待つだけ。)


(そっか。それは最高に楽しみだね。そんなに凄い人が現れてくれて俺達もラッキーだ。待った甲斐があったってもんだね。これからの事を考えると楽しみで仕方がない。やっと奴らを壊滅させられるって考えると鳥肌が立つよ。どれだけの時間を俺達は我慢して過ごしてきたのか・・・って考えるだけでも。とにかく、後はそっちからの指示を待つだけ。こちらはスタンバイ出来てるから。その「時」が来るのを考えただけでも・・・、体中が疼いてくる。)


(俺も同じだよ。ずっと彼に会ってからは体が疼いて仕方がない。後少しの辛抱だから。その時まで内部の観察は怠らないように。そこで可愛いく飼い猫のように静かに過ごしていてね。本性なんか出したらダメだからね。)


(分かってるって。そもそも日々こっちでやっている事は鬼畜の所業みたいなもんだから、可愛くしたくてもここでは可愛くはなれないね。まあ、その「時」が来るまで冷静に物事を進めるだけ。それにしても奴らのやっている事は本当に人間とは思えない位最低だ。)


(だろうね。そんな中に放り込んで申し訳ないけど。とにかく楽しみだ。それじゃ、またその「時」に・・・。これが全て終わったら、今度こそやっと会えるかもしれないね。長い間・・・悪かったね。)


(うん・・・。気にしないで。お互いが決めて進めてきた事だから。でもいざ目の前にその「時」が来るかと思うとあっという間だった気がする・・・。早く会いたいね。今度こそ。何もかも終わらせて・・・。)


(今はとりあえず、全てが上手くいく事だけを考えて、その後に俺らがスッキリとした顔しているのを想像していよう。)


(ああ、そうする。それじゃ連絡待ってる。そして生きて会おう。)


(ああ、生きてね・・・。)





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