後悔

ホタル

第1話 後悔

( あいつてっでしゃばってるよなぁ )

   

        ちがう。

( うわぁ俺ってできますよアピール?

  うぜぇ)

      そう思ってない。


( 俺よりあいつの方ができてないわ )

      

  ちがうそう思ってない、ちがうちがうちがう。

  本当にそう思ってない。

     ごめんなさい。


「おえぇ」

 朝ごはんを食べ終わると、すぐにトイレへ駆け込んだ。

 胃の中のもの全部吐いて楽になろうとする。

 どんなに吐いても、吐いても、罪悪感と不安は消えない。

 結局は落ち着かず、カッターに手を伸ばす。

手首をカッターに添えると、傷口から血が流れていった。

 別に痛いとかはない、こうすると不思議と落ち着く。

 罪悪感からも、逃れられたような気もす

る。

 でもふと考えると自分がやっていることは、周りからすれば異常で、普通じゃない。

 こんな自分が嫌になる。


「みつきおはよう」

いつものように声をかけられる。

「おはよう」

いつものように返す。

「そうそうみつき、昨日お前がいってたゲームやってみたんだけど、すげぇ楽しかった

特に〇〇の〇〇ちゃん可愛かったわ。」

「まじ?俺も〇〇ちゃん好きなんだよ、わかるわー」

いつも通りの会話だ、いつも通りのくだらない会話。

そしてこの声が聞こえるのもいつも通り。

( ぜってぇ思ってねぇだろそんなこと、

  つうか俺〇〇ちゃんそんな好きじゃねぇ

  だろ。)

      うるさい

そういつもの声、認めたくないがもう1人の俺の声。

「あの日」から突然聞こえるようになった声。

 もう誰も傷つけたくないのにいつもいつも聞こえてくる。

 友達に対して酷い事を考えてしまっている自分に罪悪感がある。 

 こんな自分が嫌いで、死んでしまいたくなる日もある。

 「あの日」みたいにまた誰かを傷つけてしまうんじゃないかと、不安になって眠れない日もある。

 辛い、辛くて泣きたくて、でも泣く資格なんてない、そんなのわかってる、わかってるけど辛い。

 死んでしまいたい、消えてしまいたい。

そんな考えが脳内に巡っている

 本当に嫌になる、逃げてしまいたい。


卒業式が近づいてきた頃、俺たちは卒業アルバムの制作を行なっていた。

 作文やイベントを考えていると、入学当初に撮った写真が出てきた。

 その写真にはあの頃のあいつもいた。

「うわー懐かしい、入学式の時の写真じゃん。」

写真を見ていると1人の友人が話しかけてきた。

「懐かしいなぁ、あの時の俺めっちゃ緊張して変な顔してるわ。」

また1人また1人と人が集まってきた。

 しばらくわちゃわちゃしていると、1人の友人が口を開いた。

「おっまきと写ってるじゃん。」

その一言で俺は手をとめた。

「まじじゃん、あいつ転校したんだよな。」

「そりゃあそうだろ、いつきのこといじめてたんだから。」

と口々に口を開き始めた。

 俺は頭が真っ白になった。

「つうか、あいつ嘘つきだよな」

「わかるわぁー、最後までいじめてたの否定してたし。」

 ちがうあいつはそんなやつじゃない。

「いつき、気づかなくてごめんな、辛かっただろ。」

 ちがうあいつは悪くない、俺が全部悪いんだ。

「あいつ、転校して逃げたよな、自分の罪に向き合えよ。」

 ちがう逃げたのは俺だ。

  ちがうちがうちがうちがう 

 「ちがうっっ」

思わず叫ぶと、あたりはシーンとした。

「ちがうあいつは悪くない、俺が悪いんだ。」

そう叫ぶと先生がクラスに入ってきた。

「いつき?なに叫んでるんだ?」

先生は、びっくりしたような顔でこちらを見た。

そりゃあそうだ、普段滅多に怒らない俺が声を荒げてるんだから。

 その日の教室は気まずげな雰囲気だった。


夜眠れず、カッターに手を伸ばした。

 腕には罪悪感を感じたぶんだけ、傷がある。

一つまた一つと増えていく傷に、自分が嫌になるが、やめられない。

 やめようとするたびに、自分なんかが許されてはいけないと思う。

 切るたびに、まきとのことを思い出す。

 ごめんなさいごめんなさい。

罪悪感が止まらない。

 「あの日」俺は、まきとと喧嘩した。

俺は本心を言うのが苦手だった、いつも周りと合わせてしまうし、好きでもない事を周りと合わせて好きといってしまう。

 苦手な人でも、本心を隠して仲良くしてしまう。

 正直こんな自分に疲れていた。

そんなある日、出会ったのは、まきとだった。

あいつは、俺の本心に気づいた。

 辛い時は寄り添い、話を聞いてくれた。

俺とまきとは多分、親友だったと思う。

 まきとがどう思ってるかは、わからないが

俺にとっては親友だった。

 でもある日のことだった、まきとが突然苛立ったように

「お前いつも本心隠してねぇで言えよ、

 いつもうじうじしてて、めんどくさいし、

 相談もいつも聞いててうざいんだよ。」

裏切られたような気がした。

 まさかまきとの本心が、こうだったなんて

知らなかった。

 でも悲しみより怒りがきた。

「お前なんかに俺のなにがわかるんだよっ。」 

 気づいたら俺は叫んでいた。


次の日から、まきとを避けるようになっていた。

 俺は怒りがおさまらず、嘘の噂を流していた。

 まきとが俺をいじめていると言う噂だ。

あっちがその気なら、俺も裏切ってやろうと思った。

本当にバカな事をしたと思う。

 今思えば、受験が近かったしその時に相談されて、イライラしていただけかもしれない。

 でも遅かった。

周りは俺の味方をし、まきとをみんなで責めた。

 やがてそれはいじめへと発展し、まきとは

転校してしまった。

 俺はひどく後悔した。

いつも自分を支えてくれた人に酷い仕打ちをしたと、その日から、俺の本心、もう一人の俺が喋るようになった。

 本心なのかもしれない、実際そう思ってしまうことはある。

 でも認めたくなくて罪悪感がすごくて、聞こえないふりをしてきた。

 でももうそれも終わりだ。

俺は明日、死のうと思う。

 これは逃げなのかもしれない。

でも、もうどうしようもなくなった。

周りに、あれは嘘だと言っても信じてくれなかった。

 だから死んで償うしかない。

でもそう思うと楽だった。

 俺は最低な人間だ、逃げることしかできない、誰かを傷つけることしかできない。

 自分が大嫌いだ。


高いところに向かった。

楽になれると思ったら、楽だったし、罪悪感もある。

 本当にこれでいいのかとか、逃げじゃないかとか、色々考えた。

でももう決めたことだから、俺は迷いなく落ち、目を閉じた。

 

グチャ

、、、、、、、

、、、、、、


「・・・・」





後日談

( いつきさんの印象を教えてください。)


クラスメイト男子

「すげぇ、気の利くいいやつだったよ、いつも話を面白そうに聞いてくれたし、なんで、ああなちまったんだろうな。」


クラスメイト女子

「 いつきくん?え〜〜、なんか、いつもヘラヘラしてたよ、いつもどっか合わせてる感じあったし。」


家族

「とても気の利くいい子だったわ、どうして私たちを置いていってしまったのっ」



???

「そうとう追い詰めてた、、、みたいだな、確かに俺はあいつに一度裏切られた、恨みがないつったら嘘になる、でも後悔してるよ、

あの日あんなこと言ってなかったらこうなってなかっただろうとか、ごめんって謝れなかったこととか、まぁもう全部遅いけど。」 


???

「でもあいつに一言いうなら、俺は多分、

バカだなって言うと思うわ。」


???はそういうと悲しそうに微笑んだ。

































あったかもしれない未来


俺は迷いなく落ちた、、、はずだった。

突然腕を引かれ、腕を引いた人物と目があった。

そいつは口を開いて、「ーーーー」といい微笑み俺の代わりに落ちていった。

 そいつはまきとだった

俺は泣いた、泣き叫んだ、まきとの言葉に、

後悔に、罪悪感に。

 急いで下に降りたが間に合わなかった。

冷たくなっていくまきとの手を握りながら、

俺はずっと謝っていた


気づいたら大人になっていた。


大人になった今でも自分を許せないでいる。

生きる権利も幸せになる権利もない俺は、

ただひたすらに働いて、毎日まきとに謝り続けていた。



都合が良すぎるため没になった話です。


読んでくださりありがとうございました。

































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後悔 ホタル @kagehinatani

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