第8話

「ちょっと寄り道して帰りませんか」


 興奮冷めやらぬぼくは天使様にそう持ちかけた。天使様も喜んで頷いてくれた。ぼくたちは区外まで足を伸ばし、小さな公園にたどり着いた。


「ここは小さいですが、結構穴場なんですよ」


 ほんとうに小さな公園だか、桜の木が何本か植えられている。満月に近い月明かりが桜を照らし、美しく輝いている。さっと風が吹き、桜吹雪がきらめいた。


 ぼくは自動販売機からお汁粉ドリンクを二本買い、呆然と桜を見上げる天使様に一本投げて渡した。


「どうぞ。成功を祝って乾杯しましょう」


「いいですね……乾杯」


 天使様は一口、二口とお汁粉ドリンクを飲み、そしてまた桜を見上げた。


「……ありがとう」


 天使様はぼくに呟いた。


「わ、私は随分と落ちこぼれなんです。こ、この年でまだ翼無し、め、免許はなんとかとれたものの一人で満足に悪霊退治もできない。て、天界では随分と肩身が狭い思いをしました」


 噛みしめるように天使様は呟く。


「そんな私でも、天宮さんが協力してくれたおかげで日々の業務をこなせています。悪霊退治までできました。こちらに来てからは楽しいことばかりです」


 そして、天使様はぼくの方に振り向いた。


「あなたに会えて本当に良かった」


 月明かりの下、照らされた天使様はとても綺麗に見えた。

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