天才は人知れず目を伏せる。

いなずま。

プロローグ

拝啓。大親友。

空は、桜が強かに吹き荒れる雨が、連日吹き荒れております。

そちらはいかがなさいましょうか。

晴天であるならば、良いことが待っているはずです。

人は天候に作用されやすいものですから。

雨天で、暗ければ暗いほど、人々の悪心は搔き乱される。

どうか、幸運を願います。



平行に並べられた線。一つ一つ、繊細で手作業で書かれたものだと見て取れる。

クシャ、という雑音。

キュ、という唇のわずかな騒音。

そのどれもが、天童稲荷の耳に深く刻まれる。

この手紙は、稲荷宛に、遠く離れた親友から送られたもの。

そして、慈悲深く、泣きそうになるほどの感動物語ののちの手紙。


皆が、そう思っている。


表の理由で、物語は幕を閉じたがる。

だから、裏の理由は、公開されなくていいのだ。

それが、本人たちの望んだことそのもの。

その先に、禁断の領域に足を踏み込んだものは、きっと「可哀そう」という同情を超え、自らのため、好奇心だ。

だから、自分も深入りはしない。

周りにもそう仕向けるのが使命だと強く感じた。

窓から、眩い光が舞い込んだ。

照らされる瞳は、翡翠のような輝きを見せ、そっと伏せたのだった。

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