言霊(ことだまの)の国から来た男
淡路こじゅ
第1話 いろいろな意味で栄光のとき
「
それは、栄光のときだった。
議場の半分からは熱気のある拍手を、残りの半分からは冷ややかな眼差しを受けながら、藤田は立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「これからだ、これからなんだ」
藤田は、
無能な党の長老たちにおべっかを使い、若手の選挙に資金を
―――日本を、立て直す。
数代続いた
藤田健一64歳、人生の絶頂にして、新たな上り坂の入り口に立った男。2049年。
そのとき、神々しい光が、彼を包んだ。
魔王との闘いは、
勇者マーカスは、肩で息をしながら、仲間たちを振り返った。
「回復の祈りは、まだ使えるか?」
「もう無理って言ってるでしょ」
そう答えたのは、白銀の鎧に身を包む聖騎士のグロリア。一見物静かな25歳の金髪美女だが、不機嫌なときの冷ややかさは焼き
グロリアは隣に立つ筋骨隆々の中年男性の方を見た。
「あんたは、バヌス?」
「もう無理だ・・・限界」
バヌスは気弱に言う。
マーカスは覚悟を決め何度かうなずいた。
「ならば、攻め切るしかないなぁ・・・カールゲン、召喚魔法は?」
「ああ・・・」
そう言って身を折るような咳をしたのは、黒いローブを着た病弱そうな老人だ。魔法使いにして召喚師。攻撃魔法のほぼすべてを使い切った彼は、究極召喚に備え魔法陣を描いていた。
「いよいよ・・・こいつの出番とは・・・感慨深い」
「また魔王が来るわよ、さっさとやりなさい、カールゲン」
グロリアが
「簡単に言ってくれるが・・・誰も成功したことのない、
カールゲンは不機嫌そうにそうつぶやいてから、目を閉じて最後の集中状態に入った。
マーカスは唾を飲み込んだ。
彼らに、もう戦う力はほとんど残っていない。カールゲンの召喚が失敗したら、彼らは全員死ぬだろう。
魔王が
その時、彼らの目の前に光の魔法陣が浮かび上がり、神々しい白い光が魔王の城に満ち満ちた。
「おお・・・」
マーカスたちは、
その
四人の冒険者たちは、城に光が満ちそして引いていく様を、魅入られたように見つめていた。
周囲は再び薄暗くなり、床に描かれた魔法陣の
そこに現れたのは、勇者たちの方を向いて深々とお辞儀をしている、高齢の男だった。
男は顔を上げる。色白でひょろひょろ、頭は
あっけにとられたような、男の視線と、マーカスの視線がぶつかる。
「・・・ええと、あんたは?」
マーカスは問うた。
「私?ええと・・・第119代内閣総理大臣ですけど・・・」
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