第13話 コイワズライ


陽翔が恐らく照の所へ行って、陸は皿を洗いはじめる。


俺は大丈夫。…そんな風に魅せてるけど、全然大丈夫じゃねぇだろ。


俺は携帯を触るふりをしてぼーっと陸をみていた。


「……ひなが居たら…もっと言いたいこと言えてたのかな……。」


……少しはにかみそんな言葉をこぼした。


「……あいつ、天真爛漫でさ、ほんと明るくてさー、辛いことがあってもすぐに切り替えれるやつだったからなー、笑」


「……」


「ひなに似てくれてたらあの二人ももう少し明るく成長できたのかな、……俺は……どうもネガティブだし…常に最悪な事態を考えて動いちゃう所あるし……」


「……」


「そんなんじゃ頼れないよなぁ、ひとり親なのにさ、笑

あー……こんなんじゃ、ひなに怒られるなー。笑」


苦しそうに笑う陸を見て、昔のことを思い出していた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


俺と陸は従兄弟という関係。


家が近いこともあってか、俺らは小さい時から一緒にいた。

兄弟のようによく喧嘩したし、めそめそしていた陸をよく怒ったもんだ。


「それでも男かよ」って怒ると、

「男舐めんな」って逆ギレされた時は笑っちゃったけど。


オシャレにも興味無い。

ゲームばっかしてるスーパー陰キャ陸が、

大学入ってすぐに「奢るから飯食いに行こう」なんて連絡してきた。


いつもは、「腹減った、飯食べたい」って奢られる気満々な癖して。

なんなら家に帰ったら陸が家で寝てることだってあったもんだ。


そんな奴が、そんな奴がだよ?

わざわざ奢りますって、大雨でも降るんじゃないかって指定の店屋に行った。


先に到着していた陸は思いふけるように頬杖をついて窓の外を見ていた。


なんだなんだ……?


「何どうした?笑」


「んー……まぁ、うん、」


「なんだよ、恋煩いか……?笑」


なんか慣れない雰囲気に耐えれなくて茶化したら


「……まぁ……うん……」


「ふぇ…!?」


図星だったみたいで変な声が出てしまった。


思いのほか大きな声だったようで周りの人の目線が痛い。

目が合った人に謝罪の念を込めて少しお辞儀して、できるだけ小声で言う。


「え、まじ!?」


「……どうせ片想いだけど……」


「……えええええ笑」


「……なんか面白がってない?」


眉を顰める様子にもうひとつ笑ってしまう。


「とりあえず誰だよ、」


「……バイト先の子。」


「うわっ、、ドラマみたいな出会いじゃん!笑」


あー、面白い面白い。


「……うん、とりあえず写真見せろ。

な?話はそれからだ。」


「ないもん」


「いや、あんだろ」


「2人で写真撮ったことないもん。」


「いや、俺ツーショットと言ってねぇんだけど?笑」


「あぁ……。笑」


耳まで真っ赤にした陸をみるとほんと笑いが止まんない。


「……これ…バイト先で撮ったやつ…。」


なんだよ、あんじゃん、さっさと見せろよ。

俺は口元の緩みを隠せず指を指した女性を見た。


「え、何めっちゃ可愛いじゃん」


「ね!そうでしょ!?」


「え、陸には釣り合わねぇよ!」


「…………んなこと……いわないでよ……」


テンション急落下。

机にうなだれる姿を見れば本気で好きなんだと思った。


「釣り合わねぇから悩んでんの?笑」


「そうだけど何。」


少し口をとがらせ俺に刃向かってくる。


「よし、恋愛っていうのはだなぁ?……」


若かった俺は少しだけ人生の先輩だからって恋愛について熱弁した夜。


「とにかくその溢れんばかりの底なし陰キャをどうにかしろ!自分磨きだ!」


ってそのまま家に帰って、一緒にスキンケアをしたっけ。


「よし、まず第1歩だ、バイトの後にご飯誘おう。な?初手だぞこれは。」


出来ないという陸に変わって俺は、ゴーストライターと化してメッセージを送った。

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