第50話 認知
皆さんお久し振りです。
3日に1回くらいの頻度で更新していきます。
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「———ぐはっ……くッ……まさかコレほどまでに差があったとは……」
「いや、ホントにごめん。思わずちょっと強く殴りすぎたかもしれん。アンタみたいな敵には何回か会ったことあるんだけど……ちょっと昔の怒りが……」
俺は腹を押さえてフラフラと立ち上がる男を見ながら気まずくなってスッと視線を逸らすと、虚空に遠い目を向けた。
あの時のイライラがつい出ちまったよ……。
ほんと、アイツには苦労したからな……。
私的に特にウザすぎて俺もクロも怒りが爆発したのは、900階層くらいに出た運命絶対変えるマン(ウザすぎてあだ名付けた)だ。
見た目は全身白塗りの身体と同じく白塗りの顔に真っ赤な目が付いている気持ち悪い人型のモンスターなのだが……それ以上に能力がキモ過ぎた。
意識せずとも自分の都合の良いように相手が動いてくれるとか頭おかしいだろ。
俺等側からすれば……自分では相手をぶん殴りたいのに、身体が俺の意思に逆らって攻撃が全く当たらないといった感じか。
更に、俺達が動けば動くほど勝手に相手が有利になってこっちが追い込まれるとか言う鬼畜要素。
結局、俺達は打開策が見つからなくて1度も相手に攻撃を当てられず、ブチギレたクロが最強最悪の魔法を発動させてその階層丸ごと吹き飛ばしてクリアした。
逆に言えば、それくらいじゃないと勝てないので、そんな奴が外に出てきたら今度こそ倒せない。
俺がそんな鬼畜能力のモンスターを思い出して顔を思いっきり顰めていると……男がよろめきながら立ち上がって俺に手を差し出してくる。
「俺の負け……完敗だ。俺の名前はアルフレッド。君の名前は?」
「あ、赤崎維斗です」
「は……ハハッ、別に今まで通りタメ口でいいさ」
「そうか。どっかの常識外れなお嬢様とは違って寛大だな」
「おい、維斗……もしかしてそれは私のことを言っているのか?」
「心当たりがあるならそうなんじゃないですかね?」
俺は頭を掴もうとしてくる椿さんの猛攻を避けながら、後ろで狼狽えている偉そうな連中に視線を向ける。
「それで……アンタら。俺、勝ったんですけどどうするんですか?」
「ぐっ……」
大統領と思わしき男がプライドを傷付けられたとでも言うように顔を歪めて呻く。
しかし流石に一国の大統領なだけあり、唇を食いしばりながらも言った。
「……く、詳しくは別の所で話さないか? ほら、見物人が大勢いるから……」
普通なら。
普通の人ならここで大統領の提案に乗るだろう。
しかし、今までのことで分かったと思うが———。
「———ふんっ、別の場所に行って私に何の特がある? さっさとここで話を付けるぞ」
———椿さんは、普通の人ではないのである。
「……あ、アイツは……」
俺の名前は
今年20歳になるしがない日本からの留学生だ。
俺が帰国する数日前———新年に世界は変わった。
突然意味分からないくらい強くて恐ろしい化け物達がアメリカ全土を襲ったのだ。
そのせいで空港便は全線運休、しかも空港にダンジョンと呼ばれるモンスターの住処が出来たことによって今後再開の見込みも今のところないとも伝えられた。
こうして、俺の日本への帰国は不可能となってしまった……かの様に思われた。
しかし———1か月後。
アメリカ軍に所属していた1人の男が空港のダンジョンを攻略したのだ。
外に出ていたモンスター達を赤子の手をひねるかの如く駆逐する姿は、正しく現実に現れたスー◯ーマンの様だった。
そんなスー◯ーマンの様な人が、日本語を離す少年に一瞬で、昔モンスターを駆逐していたあの時とは全く立場が反対になって手も足も出ずやられていた。
「う、嘘だろ……あ、あのアメリカ最強が一撃で……」
「し、しかもあの少年は、アメリカトップクラスのプレイヤーを相手にした後だぞ……!?」
「あんだよアイツ……とんでもない化け物じゃないか……!!」
「そう言えば……能力も使った様子無かったわね……」
「嘘でしょ!? アルフレッド様をスキルも無しに圧倒したってこと……!?」
俺同様、他に見ていた野次馬達もあまりのレベルの隔絶した少年に強さにただただ驚愕しているようだった。
しかし、俺はそんな彼、彼女らよりも遥かに驚いていることが1つ。
「———あ、あの子が維斗だって……!?」
アメリカ最強———アルフレッドを圧倒的な力で目の前を飛ぶ蝿を振り払うかの如く負かした少年が……嘗ての後輩だということだ。
後輩、と言っても、小学生時代にあった1年間だけのクラブで1回同じだっただけだが……あの子のことはよく覚えている。
俺よりも3歳も年下なのに異様なほどに落ち着きを払い、理知的な子。
しかし冷たい……というわけでも孤立しているわけでもなかった。
普通に優しいし友達も沢山いた。
そして1番は———あの子の異様な強さ。
子供の頃ですら、あのアルフレッドと同等程度の力を誇っていた。
昔、1度だけ彼がブチギレている現場に居合わせた。
相手は俺なんかよりもよっぽどガタイのいい中学生5人。
しかし彼は、一瞬にして彼らを沈めた。
そこまで考えた時———俺のスマホから異様に通知音がした。
「何だ……よ…………」
俺が五月蝿いな……とスマホを見てみれば、とあるSNSからの大量の通知だった。
恐る恐る開いてみると———。
———維斗が戦う動画が拡散されていた。
この日、世界は気付いた。
———赤崎維斗の存在に。
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ここまで読んで下さりありがとうございます!
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コメディーありの無双現代ファンタジー作品です!
是非見てみて下さい!
『前知の最強スキル使い〜予知スキルが全力で俺の平穏を邪魔してくる〜』
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