先行ダンジョン攻略〜世界にダンジョンが現れる約10年前から最難関ダンジョンでレベルアップしてたヤバい奴〜

あおぞら@書籍9月3日発売

第1章 世界にダンジョンが現れました

第1話 世界のダンジョン化

 20XX年1月1日0時00分。



《———これより、世界のダンジョン化を開始します》



 そんな無機質な女性の声が世界に響き渡ると共に———地球の至る所で『ダンジョン』と呼ばれる異次元の穴が開いた。

 更に、その中の一部が問答無用で『ダンジョンブレイク』と呼ばれる異次元の穴の崩壊を起こしたのだ。


 異次元の穴から出てくるのは———。



 異形、異形、異形。



 地球には存在しない『モンスター』という異形な生物が穴から溢れ出し……手当たり次第に近くにいた人も建物も車も何もかもを襲い始めた。

 人々は逃げ惑い、お互いに衝突し、足を引っ張りあってモンスターの餌になる。


 まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

 血が、割れたアスファルトや車、倒壊した建物に大量に付着している。



「こ、この世界はどうなるんだ……?」



 誰かがそう言った。

 いや、誰もがそう思った。


 しかし———ダンジョンとモンスターの出現と同時に、奇しくも人類も進化を果たすことになる。


 ———ダンジョンブレイクから30分。


 トラックを運転していた1人の人間が、偶々モンスターを轢き殺した。

 すると同時に世界のダンジョン化を告げた声と同じ声で《レベルアップしました》と言う声が頭に響き、ステータスと呼ばれる自身のパラメーターを手に入れる。

 のちに『覚醒者』又は『プレイヤー』と定義付けられる者達はモンスターを倒してレベルアップし、人間離れした身体能力を持ち、まるでアニメや漫画のような不思議な力を使ってモンスターに抵抗し始めた。

 

 そんな世界の変革から僅か7時間後。

 日本のとある地域に住む黒髪黒目の上の下程度の容姿の少年が、愛くるしい見た目とは裏腹に禍々しい青白い亀裂の入った角を生やした黒い兎を頭に乗せてぼーっとしていた。


「あー、これが前からシステムの言ってた世界のダンジョン化ってヤツか?」

「キュッ、キュッ!」

「まぁ落ち着けって。初めて外に出るからテンション上がるのも分かるけど、まずは現状把握からやらせてくれよ、相棒」

「……きゅーっ」


 勢いを削がされた少年の頭の上に乗った兎が、少し不服そうに鳴いて頭を揺らす。

 そんな兎を頭から降ろして抱っこの体勢に持ち替え、兎の頭を撫でながら少年はぶつぶつと独り言を呟いていた。


「取り敢えず……自宅の守護は後でいいとして……ばあちゃん家に泊まりに行った父さんと母さんと妹の救出が先か」

「キュッ」

「ん? どうした相棒?」


 兎が突然暴れ出し、少年の腕から飛び降りると……途端に全身の毛を逆立てて前方を鋭く睨み始めた。

 少し兎に遅れて少年も同じく前方に視線をやり———。



「———なんだ、オークか」



 気付けば———少年と兎は、豚と人間を合わせたかのような見た目をしたオークと呼ばれるモンスターの遥か後方を歩いていた。

 オークは突然目の前に獲物が居なくなったことで驚愕に辺りを見回そうと身体を動かした瞬間———自分の身体がボトボトと地面にサイコロ状に崩れ落ちて絶命する。


「キュッ!」

「えぇ……オークの肉は食い飽きただろ。次会ったらな」

「きゅー……」

「そんな可愛い顔してもダメ。先に俺の家族を助けるの」


 少年は憮然とした様子の兎の頭を撫でて落ち着かせながら、人間を遥かに超越した脚力で軽々と5階建てのビルの屋上に飛び乗る。

 そして屋上から辺りを見回し……思いっ切り顔を顰めた。


「うわぁ……よりにもよってジャイアントリザードまで出てるのかよ……。アイツ、昔は散々手間取らされたよな……そもそもレベルが100の時に何で180の奴と戦わないといけないんだよ。あれ? そう思ったらイライラして来たな」

「キュッ?」

「ああ、良いぞ。相棒———好きにやれ」


 少年の合図と共に兎の角が輝いたかと思えば———数キロ先のジャイアントリザードと呼ばれた体長30メートル程度のトカゲの上空から幾重もの雷が降り注ぐ。

 

「ギャルァァァアアアアア!?!?」


 ジャイアントリザードが奇妙な呻き声を上げた直ぐ後にその巨体から煙を立ち昇らせて絶命する。

 更にその巨体が故に、死して巨体を支える力を失ったせいで、建物を揺らす程の揺れを引き起こした。


「あーあ、死体が残ってら。相棒、加減し過ぎだって」

「きゅー……」

「ん? 使える魔力が少ない? ……あ、確かにまだ地球の魔力はダンジョン内に比べると薄いよな」


 あれほどの威力の能力を使ったにも関わらず、相変わらず呑気に会話をする少年と兎だったが……。


「ふぅ、あんまり悠長にしてられねぇな。早く家族を助けに行かないと」


 少年は気を引き締めて軽々と素早くビルから新たなビルへ飛び移る。

 中にはビルとビルの間が100メートル以上空いている場所もあったが……少年は全く意に介さず、ピョンピョンと何事もないかのように飛んでいた。


「急がないとマジでヤバいな……まぁ念の為にダンジョンのアイテムを持たせてるから大丈夫だと思うけど……」

「きゅっ、キュッ!」

「お、相棒もそう思うか? やっぱり大丈夫だよな? 何てったって……あのアイテムって俺達のダンジョンの最高報酬だしな!」

「きゅっ!」


 そう言いながら、少年は兎と共に恐ろしいスピードで駆ける。

 屋上を、壁を、道路を、屋根を、車の上、果てにはモンスターの上までも足場にして一直線に家族の下へと向かう。



 ———彼の名前は、赤崎あかさき維斗ゆいと


 

 この世界にダンジョンが現れるおよそ10年前から自室に突然現れたダンジョンを攻略していた———世界最初のダンジョンの踏破者である。


————————————————————————

 どうもあおぞらです。

 結構ノリで書いた作品なので、人気になれば頑張って続けます。

 取り敢えず5万字くらいまで様子見と言ったところですかね。


 なので———面白い、続きが気になるなどと思って下さった方は、是非とも☆☆☆やフォロー宜しくお願いします!

 また極力お返しするので、応援コメントも待ってます!


 次話から一人称です。

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