吾輩はスケキヨである

麻木香豆

第1話

 吾輩は猫である。


 そんな語り始めができるなんて幸せだろうか。


 幸せ、か。


 親猫はどこの誰かも、どこで生まれたかもわからない。


 一度人間に拾われて10年近く住んでいたが引っ越しかなんか知らんが連れて行けない、と言われて放たれた。


 はい? いきなり宿なし。


 でもなんとか生き延びてきたのは運が良かったのだろう。


 だが今まで家の中を知っていた吾輩にしては数週間でもう限界が来ていた。


 キャットフードが恋しい……。


 ああ、もうお腹もぺこぺこだ。

 草ばかり飽きてた。


 足も疲れてきた。


「おい、おい……どした」

 と誰かに声をかけられてヒョイと吾輩は何かに掴まれて体が浮いた。


 なんなんだ? さっきから声をかけてくるのは。野太い声で声かけてくる。


 初めての飼い主は可愛い子供だった。

 その家族に育ててもらった。

 その家族の中にも野太い声の男はいたがその男は紳士的で優しい人だった。


「ハハっ。お前、目の周りだけ黒いな。全身白で……なんかスケキヨみたい」


 スケキヨ? スケキヨとは?

 てか前の飼い主も吾輩のことをパンダとか呼んでた。


「スケキヨ、首輪もないな……ボロボロだし痩せとるな……。よし、うちに来い」


 ……どうやら吾輩は……



 スケキヨ、という名前になったようだ。

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