第9話 妹の入学と魔法

 ―― あらすじ ――


 説明回


 ―――――――――


 入学してから2年が経ち妹が入学する年になった。

 妹は鞄に俺達とお揃いのアクセサリーをつけてご満悦のようだ。


「お兄ちゃん達と学校だー!」

「いつも母さんと一緒に寂しそうに見送ってたもんな。」

「そうだよ!お母さんが一緒にいるとはいえお兄ちゃん達がいないのはやっぱり寂しいよ。」


 一応、帰ったら一緒に遊んだりもしていたが…寂しい思いをさせていたようだ。これからは一緒に通学することができるのでもう大丈夫なのだろう。

 ちなみにだが試験の結果、妹もクラス1になった。一緒に鍛練してたから当然なのかもしれないが…。


 ―――――――――――――――


 3年生になると魔法の授業が始まる。今までは魔力操作のみの授業だった。


「明日から魔法を使用する授業があるが…慎重にやれよ?毎年、暴発させるやつが多くてな。特に魔力量が多いやつだな。加減を間違えないように操作の復習をしておけ。…あ、そうだ。あと水着を忘れんなよ~?忘れたやつは…まぁその時のお楽しみだな。良い思い出にはなるだろ。」


 教師から注意事項を伝えられ、クラスメイト達が気の抜けたような返事をしている。生徒も学校の雰囲気に慣れたもので入学当初と比べて大分ゆるい感じになってきたな…。


「やっと魔法を使ってもよくなるんだな〜。」

「このくらいの年齢になると魔力が安定して魔法を安全に使えるようになるんだってさ。」

「へぇ…。そんなことよりもだ!明日の魔法の授業でどんな魔法を教えてもらえるんだろうな!?」

「たしか…ただ水を作り出すだけの魔法だな。基礎魔法で暴発しても水をまき散らす程度で済むやつだな。」


 教師の話が終わり、帰宅の時間になった教室では大半の生徒が帰らずに明日の魔法の授業について話していた。

 毎年のことだが必ず魔法を暴発させるやつがいるんだよな。最初に習うのは水系の基礎魔法で…クラスメイトの何人かが暴発させた結果、みんなで水浸しになるのが恒例となっている。


「トトキ…気を付けろよ?お前くらいの魔力量のやつが一番暴発させやすいらしいからな。」

「僕よりリフの方が魔力量多いんだからそっちこそ気を付けないとなんじゃない?」

「まぁそう…だな。お互いに気を付けないとな?」


 正直、前世で散々に使ってきたから何の問題も無いんだよな…。内緒でこっそりと使ったこともあるし。

 その日は一度帰った後にいつもの5人に俺の姉と妹の2人を加えた7人で集まって魔力操作の復習を行った(妹にとっては予習になる)。


 次の日の授業。忘れずに持ってきた水着に着替えて魔法訓練場へと向かう。…何人か水着を忘れたようで体操服で参加しているな。


「さて…全員揃ったようだし早いけど授業を始めるましょうか?」


 少し離れた位置から様子を見ていた教師がこちらに歩いて来ながら声を上げる。入学してから初めて会うことになる魔法授業の教師だ。


「まずは初めましてね?私は魔法の授業を担当しています。マリエスタ・クラトエラと申します。…みなさん、よろしくお願いしますね?」


 真面目な感じの教師だと感じた。前世だと老齢の女性教師だったはずだが…あの人は別のクラス担当なのだろうか?考え事をしていると授業開始の鐘が鳴る。


「では、授業開始の鐘も鳴ったところで…魔法を初めて使う皆さんに簡単なお話をさせていただきましょう――――」


 そこから簡単な注意と気にするべき点などを説明される。魔法をむやみやたらに人に向かって使ってはいけない等の常識を説くようなものが多かった。

 それから魔法の原理についてだな。この辺りは魔力操作の授業でも何度か教わっていた部分だ。


 魔法を発動するにはいくつかの方法がある。主な方法は3通りで、まず1つ目は魔力そのものを自分で変換し形としたもの。2つ目は魔法陣と呼ばれる図式に魔力を送り巡らせ発動させるもの。3つ目は呪文の詠唱に魔力を乗せて発現させるもの、だ。

 主な…とは言ったが呪文の詠唱については今現在ほぼ使われていない。理由は詠唱が非常に長く、魔力を少しずつ一定の量を乗せ続ける必要があり長時間集中しないといけないからだ。一番短いものでも発動までに3分ほどかかる。そのため戦闘では全く役に立たないことから研究以外の目的で使われることがなくなったのだ。


 話がそれたが今回の授業で使われるのは魔法陣式のようで、濡れても問題ないインクで図式が描かれている手のひらサイズの布が生徒に配られた。


「みんなに行き渡ったかしら?それじゃあ最初に先生がやって見せるから魔力の動きと魔法陣の光り方を見て覚えてね。」


 そう言うと手本として見せるために縦に吊るされ用意された魔法陣の描かれた大きな布に手を当て魔力を流し始める。すると魔法陣に触れられている場所から徐々に光が広がっていき全体に光が広がると中央あたりから水がカーブを描くように放出される。


「と、このように使います。流れはなんとなくわかりましたか?それじゃあ少し離れた後、各自で始めてください!」


 教師の指示に従ってそれぞれが少し離れた位置に立ち魔法陣に魔力を流し始める。少し周囲を見ていたが魔力を流し込んだ後に魔法陣に巡らせることに苦労している人が多いようだ。慣れないと偏りができて魔力が散ってやり直しになるんだよな…。


「あれ、リフはやらないの?」

「ん?周りを見てたんだ。水が飛んで―――」


 トトキに声を掛けられそちらに気を取られた時、「バシャン」と水が飛び散る音が近くで聞こえ俺達は水浸しになった。

 音が聞こえた方を見るとメクリマと目が合った。


「悪い…。」

「何やってんのさー!私たちまで水浸しじゃない!」

「だから、悪かったって…。魔力の込め過ぎだったみたいだぜぶっ」

「ごめん…。僕もやらかしたヨ…。」


 ステムが怒りメクリマが謝っているとパンデも暴発させて水をまき散らした。

 改めて周囲を見てみると…あちこちで水が飛び交っていた。


「これは仕返しにわざと暴発させてるやつもいるな…?」

「あはは…水かけっこみたいで楽しくなっちゃったのか…なっ!?」


 どっぱーん!と一際大きな水の音が聞こえ大量の水に横から叩かれた。

 俺は何とか踏ん張り切れたが間に合わなかった周囲の生徒達は水に流されたようで、少し開けた空間ができていた。


「トトキ…お前が一番ひどいな…。」


 当然だが遊び始めた事を含めて教師からお叱りの言葉をいただくことになった。

 その後はみんな少し真面目にやっていたが…授業終わりまでトトキはみんなから距離を取られていた。

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