勇者と友人の日常モノ(仮)
N/A
第1話 プロローグ
魔力をいう力に満たされ魔物を呼ばれる生物が存在し魔法と科学、そしてそれを合わせた魔科学と呼ばれる技術の発展した世界のとある荒野で二人の青年が激しい戦いを…。いや、激しくも一方的な戦いが繰り広げられていた。黒髪の青年が激しい攻撃を繰り出し、紫髪の青年が息も絶え絶えに防いでいる状況だ。とはいえそんな状態が長く続くはずもなく…とうとう黒髪の青年の持つ剣が紫髪の青年の胸を刺し貫く。
「ごめんな…助けられ…なく…て……」
傷だらけの紫髪の青年が自分を刺し貫いた敵であるはずの黒髪の青年に謝罪をする。
だが、謝られた青年が表情を変えることは無く剣を振りぬき青年を打ち捨てどこかへと立ち去って行く。
(どうして…どうしてこんなことになったんだろうな……)
地面に横たわる青年が途絶えつつある意識の中で考えるもそれに答える存在はいない。
―――――事が起こる数時間前――――――――――――
世界にいくつかある都市の中でも王都と呼ばれる一際大規模な都市の一角に勇者と呼ばれる青年を中心としたパーティと都市の防衛を主目的として活動する騎士団の大隊が他の都市の防衛任務を終え帰還した。
まぁ帰って来て早々に別の任務を伝えられ勇者のパーティはすぐに出発することになったのだが。
「皆様お疲れ様でした!私達はこのまま魔物の大規模侵攻のあった都市に向かいます。」
「勇者様方もお疲れ様でした。皆様もお疲れだと思うのですが休まずに向かうので?」
「はい。それなりに数は減っているもののまだまだ魔物の勢いは衰えていないようでして…。それに魔物の大規模な侵攻では邪神に関する手掛かりが手に入る可能性が高いので直接現地で調べておきたいんです。」
「なるほど、承知しました。どうか皆様ご武運を!」
「ありがとうございます!いってきますね。」
会話を終え勇者パーティのために製造された小型の高速飛行艇に手を振りつつ向かっていくのは勇者である紫髪の青年"トトキ"。
「あ、待っててくれたんだ?先に乗り込んでても良かったのに~。」
「気にしなくていい。俺が待ちたくて待ってたんだから。」
そんな勇者を飛行艇の入り口で待っていたのは勇者の幼馴染で親友の黒髪の青年"ローリフ"。彼は合流した勇者と談笑しながら飛空艇に乗り込んでいく。
その後、飛び立った飛行艇は都市へと向かう途中にある森林の上空で黒い霧に襲われ墜落した。
「ぐッ……何が起こったんだ!?」
「わからない。だが、黒い霧のようなものに覆われたと思ったら飛空艇がボロボロになって……。」
「とにかく現状を把握するためにもいろいろと調べるしか……なっ!?またあの黒い霧だ!気を付けろ!」
多少の傷は負ったが無事に脱出できたものの息をつく暇もなく再び黒い霧に襲われる一行。だが、黒い霧は脱出し飛空艇の近くにいた者を無視し墜落した飛空艇にまとわりつくように覆っていく。
「飛空艇に反応しているのか?だが、あんなものの情報は無かったはずだが…」
「大規模侵攻といいこれといい……邪神による影響なのでしょうか……」
「ねぇ、ローリフが見当たらないんだけど……」
「まさか、まだ飛空艇の中に!?」
―――飛空艇内部――――
ローリフは運悪く窓のない作業部屋で武器の手入れをしていて、さらに運のないことに墜落の衝撃でドアが歪んでしまい脱出するのに手間取っていた。
現在は黒い霧と墜落の影響であちこちに歪みや亀裂が走っている艇内を慎重に移動している。
「何があったんだ。揺れを感じたと思ったら強い衝撃があって…なんだかあちこち変にボロボロだな。墜落の衝撃だけじゃこんな風にはならないはずだ……。」
異様な雰囲気の中を移動していると黒いモヤの様なものが亀裂から立ち上り始めた。火災が発生していた場合、早急に脱出しないとまずいと思い急いで移動しようとするもどういうわけか黒いモヤがすごい勢いで身体に纏わり付いてきた。
「なんだ…これ……。まとわりついてきて…ぐっ…触れたところがおかしい……!」
―――墜落現場―――――
「くそっどうなってんだ!霧っぽい感じなのに風魔法でも吹き飛ばないとかおかしいだろ!」
「勇者の浄化の力は少し効果があるみたいだけど…ほんの少しだけだから時間が……」
なんとか飛空艇の内部に入ろうと試行錯誤しているものの、あまりいい結果を得られずにいた。
「早くなんとかしないとローリフが……」
勇者たちが手をこまねいていると、突如として黒い霧が消え直後に激しい爆発が発生した。突然のことではあったが何とか防御することができた勇者達が次に見たものは爆散し散らばった飛空艇の残骸の中に佇む姿が変わった友人の姿だった。体の一部には黒い紋様が浮かび上がり背には黒い翼のようなものが生え頭上には黒く禍々しい輪が浮いていた。さらに手には見たことのない黒い剣が握られており黒い炎のようなものがゆらゆらと揺らめいている。非常に強い負の力も感じられ状況はかなりまずい方向に進んでいると思った。
「みんな気を付けて。ローリフの姿をしてるけど強い負の力を感じる」
「そんな…まさかローリフが何者かに乗っ取られたの?」
「おそらくは…。さっきの黒い霧のことも考えると邪神に関連する何か…だろうね。万が一の時は覚悟を決めないといけないだろう。」
「くそが…仲間同士で殺し合いだなんて悪趣味が過ぎるぜ。」
「とにかくだ。警戒と防御の姿勢を取りつつ徐々に接近し―――――」
警戒しつつ仲間に指示を出している時だった。突如ローリフが攻撃を繰り出し仲間たちが吹き飛ばされ離れたところからグシャッという嫌な音が聞こえた。
「自分への攻撃を防ぐので精いっぱいだった……これは思った以上にまずい状況かもしれない……。」
仲間の安否を確認したいが相手から目を離すわけにはいかなかった。それにすでに相手は攻撃態勢を取っておりこちらを攻撃しようとしており、考えている時間はなかった。
それからどれだけ時間が経過しただろうか。感覚がおかしくなるほどの激しい攻撃をなんとか防いでいるものの傷は徐々に増えボロボロになっていく。森だった辺りは余波で荒野に成り果て仲間達は姿形もない。絶望の中で勇者はとうとう攻撃を防ぎきれなくなり胸を剣で貫かれてしまう。
「ごめんな…助けられ…なく…て……」
だがかつての友人は返事をせず、無表情のまま剣を振り勇者を打ち捨てどこかへと去って行った。
(せめて最後に声くらいは聞きたかったなぁ…ずっと一緒に頑張ってきて…どうして…どうしてこんなことになったんだろうな……)
こうして勇者パーティは全滅し圧倒的な力を持った何者かによって世界は蹂躙され破滅への道を進むのであった――――――――。
―――――????――――――――
「であった―――――。じゃ、ないんですけど?」
「ウンウン。ま~それが君がここに呼び出されるまでにあったことだよ。――――――――ローリフ君。」
気が付いたら真っ白い部屋にいて、そこにいた「超絶美女な」女神さまに何があったのか話を―――
「勝手に割り込まないでもらえますか…。」
「ごめ~んネ☆」
「ハァ…いいですよもう。で、何ですか?俺が乗っ取られて世界を破壊したから責任を取れってことですか?」
「それは違うかな?勇者の友人であった君には勇者をサポートするために女神の加護が与えられていてね」
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者のサポートをするために友人である俺に女神の加護ですか?じゃあ勇者は……。」
「勇者っていうのはね、世界から加護を与えられた存在のことなんだよ。そしてその勇者をサポートするための人物に女神である私たちが加護を与えてるの。まぁその辺は色々と複雑なのよ……。で、君を呼び出した理由は私たちの加護をもっていることも理由なんだけどー……。」
と、いろいろと説明をされたのだが…俺の体を乗っ取ったのは邪神であり魂が一時的とはいえ同じ体に存在したため影響を受けていること。あとは今、全力で時の女神が時間を巻き戻しているから勇者と共に世界を破滅から救ってほしい…とのことらしい。
「協力体制を築いているとはいえ世界から加護を受けている勇者に干渉するわけにはいかないし、邪神に影響された女神の加護持ちっていうのもやばいし…。貴方の時間を巻き戻すのが一番苦労したみたいよ…。邪神から影響を受けたせいで神性を帯びちゃってるし。何はともあれもうちょっとで巻き戻し終わるみたいだからそのあとは元の世界に戻って頑張ってね!」
軽い感じで言われたけど色々とやばい情報が混じってるような…。そういえば何人かの女神様達があわただしく動いていたけど今はだいぶ(死屍累々な)落ち着いてきた様子だ。まぁ一人だけ必死の形相で何かやってるけど…あの方が時の女神様なんだろう。
「お、終わったわ…。巻き戻せるだけ巻き戻したから、あとは彼を送り込むだけよ。あともう一度同じことをやれと言われても数百年くらいは力の回復に努めないといけないからその後になるわね。ただ回復に努めている間も時は進むから…まぁ次に失敗したらお終いなんだけどね。」
周囲の様子を窺っていると必死の形相で作業をしていた一人がやってきた。さらっと恐ろしいことを…失敗が許されないのはなかなかハードだ。だがやり遂げなくてはならない。親友の…あの最後の表情は見たくないし。
「それじゃあ準備が整ったので!ローリフ君、頑張っておいで!おねぃさん達もここからできる限りのサポートはするからネ!」
俺に色々と説明をしてくれた女神様がそういうと意識が徐々に暗闇に覆われていき目が覚めるとそこは…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます