我が輩は猫である。名前は軍曹である。

夕日ゆうや

軍曹は諦めない

 猫である彼は軍曹である。


 空き地に広がる草木の中、我が輩は周囲を猫に囲まれる。

 周囲に目をくべらせていると、一匹の猫が近寄ってくる。ロシアンブルーの彼だ。

「軍曹!」

「にゃんだね?」

「今次作戦において、タマに冷たすぎにゃせんか?」

「にゃあに。彼ならやってくれるにゃ」

 にたりと笑みを浮かべて我が輩は決戦の場に向かう。

「さっそくいくにゃ、皆の者、爪は研いだかにゃ?」

「「「にゃ――――――!」」」

 みなの声を聞き、我が輩は戦場へと赴く。

 ネコフラッシュが光り、我が輩は草木を盾にする。

「くそぅ。にゃんだ?」

「軍曹。恐らく、秋野サンマの奴らです!」

 悲鳴に似たムギの声。

「にゃら、こっちも決戦兵器を使うにゃ!」

 我が輩は後方に控えていたタマに声をかける。

「にゃってにゃした!」

 タマは方言の強いしゃべりで、兵器を起動させる。


 XYZ500-0009 ルンバ。


 起動したルンバは戦場の真ん中を行き、敵歩兵部隊を蹴散らしていく。

 その背に乗せたマタタビの威力もすさまじく、次々と敵兵を虜にしていく。

「活路は開いたにゃ! 一気に攻め込むにゃ!」

 我が輩の合図で一気になだれ込む。

 ルンバが戻ってくるまで二十八秒。

 なんとしてでも切り抜ける。

 そう心に誓い、我が輩は猫パンチを食らわせる。


 ルンバが戻ってくるのが見え、我が輩は焦りを見せる。

 その隙に敵猫の鋭い爪が皮を引き裂く。

 声を上げることなく、その猫にパンチを食らわせる。

「最後の賭けにゃ」

 我が輩は特攻することに決めた。

 我が輩は無理でも、家族が、仲間がエサにたどりつけばいい。

「これは負けではにゃい!」

「「「軍曹!!」」」

 そう言い残し、我が輩は敵の陣地に突っ込む。

 泣き叫ぶものも少なくはない。


※※※


「ほら。軍曹くん。ダメじゃない。一緒に食べよ?」

 女の子がそう言って我が輩の身体を簡単に持ち上げる。

 周囲にいた猫たちも、今はエサを食べている。

 ここはペットショップ。

 野良な我が輩たちが唯一、エサにたどりつく場。

「ほらほら。シロも食べる」

 そしてその店員は優しく、我が輩たちを迎え入れてくれたのだ。

「さ。マタタビよ」

「にゃーん♡」

 我が輩の戦いは終わったのだ。


                 ~完~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我が輩は猫である。名前は軍曹である。 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ