いろはが見たかった丸い小さな卵形の遊具はなくなっていた。

 理由はわからないけど、どうやらその遊具はもう撤去されてしまっているようだった。

 公園の中にある遊具はブランコと鉄棒と滑り台だけだった。(どれも綺麗で新しいものだった)

「私、ブランコに乗りたいです」

 とあゆみが言ったので、いろははあゆみと一緒にブランコに乗ることにした。

 ブランコは意外と楽しかった。

 それから二人は公園の中で、いろんなお話をした。

 二人の今までの生きてきた思い出や、好きなこと、嫌いなこと、行ってみたい場所、将来の夢、好きな人のこと、(……それから家出の理由とか)そんなことを話した。

「いろは先生はどうして小学校の先生になろうと思ったんですか?」あゆみは言った。

「憧れの先生がいたから」といろはは言った。

「なら、私も将来、先生になろうかな?」と小さく笑ってあゆみは言った。

「あゆみさんならきっと素敵な先生になれると思う」といろはは言った。

「どうしてですか?」

 ブランコを漕ぐのをやめてあゆみが言った。

「『人の痛み』がわかるから」

 とあゆみを見て、にっこりと笑っていろはは言った。

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