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あゆみは十五歳になる中学三年生だった。
通っている中学校は東中学校で、それもいろはの思っていた通りのことだった。
「あゆみさん。あゆみさんはこんなところでなにしているの?」といろは言った。
「……わかりません」とあゆみは言った。(それはきっと、あゆみの本心なんだろうといろはは思った)
「小川先生はなにをしているですか?」とあゆみは言った。
「私? 私はえっと」といろはは言った。
……実は家族と喧嘩をして家出をしています、とは言いずらかったし、それに家出はきっかけであり、いろはが今、こうして旅をしている理由はなんだろう? とあらためて考えてみると、その答えに困ってしまった。(もしかしたら、答えなんて初めてからなかったのかもしれないけれど……)
さて、困ったぞ。
私はここでいったいなにをしているんだろう? いろはは、うーんと難しい顔をして、ベンチの椅子の上で、そのことについて悩み混んでしまった。(こうしてなにかについて、深く悩んでしまうことはいろはの子供のころからの悪い癖だった)
そうやっていろはが悩んでいると、隣でくすくすと笑う声が聞こえた。
いろはがその声を聞いて顔を上げると、いろはの隣であゆみがとてもおかしそうな顔をして、口元を綺麗な白い手で押さえながら、小さな声を出して笑っていた。
「ごめんなさい、でも」
といろはを見て、あゆみは言った。
そんなとても楽しそうなあゆみを見て、いろはもなんだかすごくおかしくなって、あゆみと同じように(声を出して)いろはは笑った。
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