微睡みに沈む温度

 微睡みの中、こつりこつりと歩み寄る足音を聞いた気がする。頭の形を確かめるようなゆっくりとした手つきが頭頂部から後頭部を通った。精一杯起きようと目を開こうとしても、起きなくていい、と慈愛に満ちた声が鼓膜を僅かに揺らしたので、体の力を抜く。もう一度頭に触れた手は自分のそれより温度が低い。この夢現ゆめうつつの中でしか慈しんでくれないあなたは一体誰なのだろうか。懐かしいにおいだけ残して消えるあなたは。

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