第12話 乙女心は複雑だ
舞子さんが作ったカレーを完食した俺と舞。うまかったから、おかわりしちゃったぜ。
「正志君はおいしそうに食べてくれたわね~」
斜め向かいに座ってる舞子さんは、俺達より後に食べ始めたのでまだ食事中だ。
「実際おいしかったからおかわりしたんですよ」
マズイのをおかわりするなんて変態だろ。
「そう言われると、おかわりしてないあたしが悪いみたいじゃん!」
向かい合ってる舞が、何故かイライラした様子でツッコむ。
何怒ってるんだ? 俺なんかしたか?
「…そうだ、お風呂の順番を決めておかないと。私と拓海さんは3番目か4番目に入るから、最初と2番目を決めてちょうだい」
舞子さんの言う通りだな。話し合わないと、脱衣所で鉢合わせてしまう。
「舞、どうする?」
「正志、あんたが最初に入って」
「良いのか? 1番風呂だぞ?」
女子はキレイな風呂に入りたいとばかり…。
「良いの!」
何なんだ? “異論は認めない”みたいな態度? さすがの俺も少しイラっとした。
「あたしは部屋に戻るから」
舞はそう言って席を立ち、リビングを後にした。
「正志君。舞を悪く思わないでね」
2人きりになった時、舞子さんが申し訳なさそうに言う。
「それは良いんですけど、俺なんかしたんですか? またあの日になったとか?」
「そうじゃないわ。舞がイライラしてた原因は“2つ”あるの」
「2つ?」
どっちも心当たりないぞ?
「最初はカレーの事ね。舞もきっとおかわりしたかったはずよ」
「? だったらすれば良いのでは? ご飯もルーも残ってますよね?」
俺が平らげた訳じゃない。
「できたら良いんだけどね。しなかったのは、ダイエットのためよ」
「ダイエット? 舞って太ってます?」
俺の感覚がおかしいのか?
「太ってないと思うけど、年頃の女の子は体重にすごくデリケートなのよ。ご飯は炭水化物だから、食べ過ぎるとすぐ数字に出るの」
そんな風に思ってる時に、俺がおかわりしたからイライラしてたのか。あれ? この流れって“生理”の時と似てるな。(4話参照)
「どっちが悪いって話じゃないから、気にしないでもらえると助かるわ。舞も後悔してるかもしれないから」
「わかりました。2つ目は何です?」
「お風呂の順番ね。ここまで言えばわかるんじゃないかしら?」
「……もしかして、俺が2番目だと舞の脱いだ下着を見ちゃうから?」
最初に入れば、見られる事は絶対にない。
「それもあると思うけど、正志君の脱いだ下着をクンカクンカするためよ」
「舞がそんな事しますかね?」
「野菜を切る前に正志君、自分で言ったでしょ? 『舞はムッツリだと思う』って」
「クンカクンカは、ムッツリじゃなくて変態の域では?」
俺の中ではそういうイメージだ、
「大して変わらないわよ」
そうなのか? 俺が気にし過ぎてるだけ?
何はともあれ、舞がイライラしてた理由2つが判明した。しかし、俺に何ができるんだろう?
舞を気遣って、おかわりを止めれば良かったのか? でもそうしたら、今度は俺がイライラするだろう。うまいカレーをたくさん食べたいと思うのは当然だ。
風呂の順番については、さほど気にしていない。この居候生活が終われば関係なくなるからな。
「私から舞に言っておくわ。『イライラを正志君にぶつけちゃダメ!』って」
「…いえ、その必要はないです」
「どうして?」
「だって舞は、学校では絶対イライラした態度を取らないんですよ。でも俺にはぶつけてくる…。それって信頼されてる証ですよね?」
間違いなく相手を選んでいる。選ばれてる事に感謝したほうが良い。
「正志君って、真面目な時は本当に真面目よね~」
「褒めてるんですか? それ?」
「もちろん。そのメリハリが正志君の魅力だと思う」
「ありがとうございます。…俺はそろそろ舞の部屋に戻ります」
「わかったわ」
俺は席を立ち、舞の部屋に向かうのだった。
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