【完結】母と彼女のお母さんに教えられる、愛の性教育

あかせ

第1話 本番に向けてのお勉強♡

 「正志まさしまいちゃん。高校合格おめでとう!」


リビングのダイニングテーブルに向かい合って座っている母さんが笑顔で拍手する。


「ありがとう」

嬉しいけど照れ臭いな…。


「ありがとうございます、清美きよみさん」


隣に座っている舞も恥ずかしそうだ。付き合ってれば、反応も似るのかな?



 俺、手塚てづか 正志まさしは隣にいる幼馴染かつ彼女の足立あだち まいと同じ高校に合格した。家が隣同士だから、俺達はもちろん親同士の交流も盛んだ。


だからこそ舞に恋心を抱き、中1の時に俺から告白した。あの時は死ぬほど恥ずかしかったな…。


今日は高校の合格発表を知ってから数日後の土曜日。母さんと舞の母の舞子まいこさんがお祝いをしてくれるって事で、舞に家に来てもらった。


舞子さんは有名店のケーキを買いに行ってる最中らしい。もうそろそろ来るはずなんだが…。


『ピンポーン』


呼鈴が鳴ったぞ。母さんは椅子から立ち上がり、モニターの元に向かう。


「舞子さんみたい。…今行くわ」

モニター越しでそう伝えた母さんは、早歩きで玄関に向かう。


…リビングに、俺と舞だけが残される。


「高校に合格したからって、浮かれちゃダメだからね正志」


「わかってるよ。舞は心配し過ぎ」


舞は真面目だが、それ故に恋人らしい事はあまりできていない。できたのは手を繋ぐだけだ。に行きたいものの、言う勇気が出ないな…。



 「正志君・舞。○○高校合格おめでとう!」

母さんと一緒にリビングに入ってきた舞子さんも嬉しそうに祝ってくれた。


「ありがとうございます、舞子さん」


「ありがと」


…母さんはキッチンに向かい、舞子さんは持っているビニール袋をテーブルに置いてから、舞と向かい合って座る。


その後、袋からケーキが入ってると思われる箱を取り出してテーブルの上に置く。


「正志君はショートケーキにしたけど良かったわよね?」


「はい」

俺にとって、ケーキ=ショートケーキだ。ナンバーワンの地位は揺らぎはしない。


「あんたの味覚と好みは、小さい頃と全然変わらないわよね~」


「そういう舞はどうなんだよ? チョコレートケーキを卒業したのか?」


「してないわよ正志君。舞はビターチョコケーキにしたの」


「そうなんですか。じゃあ、俺の事言う資格ないじゃん」


「正志、お母さんの話聴いてた? あたしのは“ビター”よ? 苦めなんだから、子供の時とは違うの」


「だったら俺も“ビターショートケーキ”にすれば…」

同じ立場になれるよな?


「…あはは。そんなのないから!」

舞に大笑いされた。


「正志。おバカな事を言って私を困らせないで…」


呆れた母さんが、トレイに皿と飲み物を乗せてテーブルそばまで来た。それから各席にセットし始め、再び俺と向かい合って座る。


俺と舞は紅茶・母さんと舞子さんはコーヒーみたいだ。


「舞ちゃん。これからもおバカな正志をお願いね」


「はい、任せて下さい!」


「母さんまでひどくない!?」


俺を除く3人が笑い出す。これからもこんな感じが続くと良いな…。



 3人が落ち着いた後、いよいよケーキの時間だ。俺はショートケーキ・舞はビターチョコレートケーキ・母さんはモンブラン・舞子さんはミルフィーユになる。


「それにしても、もう高校生になるのね。時間の流れはあっという間だわ~」

舞子さんが俺と舞を見る。


「そうね。正志は舞ちゃんのようにしっかり欲しいわ…」


「母さん、今はそれぐらいにしてくれ」


「はいはい」


今日の俺は祝われる立場のはずだろ? 何で貶されるんだよ?


「大人の階段を登り始める2人にどうしても知ってほしい事があるの」


「知ってほしい事? 舞子さん、それは何ですか?」

難しい話は勘弁だぞ。


についてよ。正志君、この意味わかるわよね?」


本番ってエロい意味のアレ? 舞子さんは俺をからかってるのか、それとも俺が勘違いしてるだけ?


よくわからないから、舞にアイコンタクトでヘルプを求めよう。そう思って観たところ…。


「あんたの思ってるで正しいから」

舞は少し顔を赤くして答える。


「舞は実際にを見た事があるのよ。わたしと拓海たくみさんのを♡」


拓海さんは言うまでもなく、舞子さんの旦那さんの事だ。


「そうなんですか? 舞は教えてくれませんでしたよ?」


「そんなの言う訳ないじゃん! もし正志がになったら…」


仮にになったとしても、手は出せないって。それだけの行動力があるなら、とっくの昔にキスぐらいやってるよ。


「舞ちゃんの気持ちはよくわかるわ。だからこそ、私と舞子さんでこっそり話し合ったのよ。『2人が高校に合格した後に“女”について教える』って」


「母さん、何で高校に合格した後なんだ? 舞と付き合い始めた中1でも良くない?」


「中1はさすがに早いでしょ? あの頃のアンタはゲームで頭が一杯だったんじゃないの?」


今もそうだと思うが、口を挟まないでおこう。


「これは舞のためでもあるし、正志君のためでもあるの。“その場の勢い”では絶対許されない事だから」


そう言われると、舞を誘いづらくなるよな? 舞子さんの狙いはそれ?


「正志君。わたしは『本番をするな』と言う訳じゃないの。正しい知識と予防をすれば、止めるつもりはないわ」


「ちょっとお母さん!? を止めないの?」


「さっき言った通り、その場の勢いはダメだけど経験はしてほしいのよね~」


「あたしにを経験させたい?」


「そう。世界が変わると思うわ」



 とりあえず難しい話じゃなさそうだ。その点は安心だが、舞子さんがどこまで話すかが気になる。保健体育で習った程度なのかそれ以上なのか…。


「舞子さん。詳しく聴かせてください」

元々、舞とのに興味はあるんだ。参考になる…はず。


「…正志。下心丸見え」

呆れる舞。


「正志の自制心がどれだけ持つか…」

母さんにも心配されてしまった。


「じゃあ、ケーキを食べ終わったらに向けてお勉強しましょうね♡」


……待ち遠しい俺は、一番最初に完食したのだった。

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